28期生 村田 智弥
コーポレートガバナンスコードの遵守及び逸脱の要因分析
コーポレートガバナンスコードとは、企業が株主や従業員、地域社会等のステークホルダーの立場を踏まえた意思決定を迅速かつ公正に行うための仕組みである。 本コードは必ずしも遵守を求める性質のものではなく、各企業の事情に合わせ、適切に理由を説明した上で逸脱することも認められている。また、本コードが罰則を持たないソフトローであることもあり、具体的な行動指針や定量的な進捗を示すことなく逸脱する企業が散見される。そこで本研究では、総資産額や女性取締役割合 、外国人株主比率など企業に固有の変数がこれらの遵守及び逸脱や、逸脱の際の説明の質にどのような影響を与えるのかを実証的に分析する。
本研究では被説明変数をコードを遵守する「Comply」、逸脱するが適切な説明がなされている「適切Explain」、逸脱し適切な説明もなされていない「不適切Explain」の3種類を設定した。また、説明変数として先に述べた3点(総資産額、女性取締役割合、外国人株主比率)に加え創業年数、ROA、業界ダミー、一族経営ダミーを採用し、二段階プロビットを用いた推定を行った。
分析の結果として、以下の4点が明らかになった。
①外国人株主比率が高いほど企業は株主総会の招集通知の英訳に積極的である。ただし、外国人株主比率は逸脱に際する説明の質には影響を与えず、遵守及び 逸脱を選択する際に遵守に正の影響を与える。
②一企業における女性取締役の割合は必ずしも女性管理職や外国人の採用など多様性の確保とは結びつかない。一方で、それらの企業が原則を逸脱する際の説明の質に関しては正の影響を与える。
③企業の総資産額は社外取締役の独立性に影響を与えず、また逸脱に際する説明を行う際もその質を改善する効果はない。
④一族経営の企業は指名委員会や報酬指名委員会の設置に積極的であり、仮に逸脱する場合においてもその理由を適切に説明することに対しても正の影響を与える。
本研究の課題として、研究の対象が特定の原則に限定されたことが挙げられる。先行研究や各社の報告書に目を通す中で、企業間で説明の質が大きいと感じたものや先行研究で問題視されていたものを中心に仮説を設定したが、全ての原則に関して同様の分析を行ったわけではないため、他の原則に関しても同様に研究を行うことが期待される。また、一族経営の判定方法や、適切/不適切Explainの判定基準などを変更することで異なる分析結果が得られることも想定されるため、より多くの人が直感的に納得できる判定基準の作成も今後の課題として挙げられる。