28期生 下西ノ園 尚樹
学校給食の質に対する自治体の財政的制約の影響
2026年現在、東京都では公立小学校における学校給食費の保護者負担の無償化が進んでいる。今後は国が主導して全国的に無償化が実現されることが見込まれる。給食の費用負担構造の変化に加えて、学校給食の材料である食料品価格上昇が全国的なトレンドとなっている。こうした現状を踏まえて、学校給食の質を維持し続けるためには、給食の質がどのような要素に影響されるのかを明らかにする必要がある。本研究は給食の質と自治体の予算や財政的余裕との関係を解明することで、今後の政府や地方自治体の学校給食に関する政策に含意をもたらすことを目指した。
本研究では自治体の財政的制約が給食の質に与える影響について、東京都の公立小学校の集計データを用いて、パネルデータ固定効果分析を行った。給食の質を測るために、給食の栄養や内容面の豊かさを表す変数としてエネルギー、タンパク質、使用食品数を、給食の食育プログラムとしての充実度を表す変数として地産地消に関する指導を実施している学校の割合、環境に配慮した特別農産物を使用している学校の割合を用いた。
その結果、第一に物価の影響を考慮した実質給食費が給食の質に与える影響を検証した分析では、給食費の増加が給食の一部の内容を向上させる正の効果を確認することができたが、その効果の大きさは限定的であった。実質給食費つまり給食の食材料費が上昇すると給食のエネルギーやタンパク質が有意に増加することが確認できたが、他の給食の質を表す変数では影響を確認することができなかった。
第二に自治体の財政力と物価変動が給食の質に与える影響を検証した分析では、有意な効果を確認することはできなかった。自治体により財政的余裕が生まれたとしても給食の質は向上するとはいえず、また物価が上昇した局面においても自治体の財政力は給食の質に影響を与えなかった。
以上を踏まえて、本研究では給食の予算制約が栄養や内容面に与える影響を限定的ではあるが確認することができた。自治体は物価の変動に合わせて、柔軟に食材料費を含む運営費を確保し続けることが必要である。最後に本研究の課題として給食の質を完全に把捉しているとはいえない点が挙げられる。給食の質は多面的な要素によって決定されるため、今後の展望としては集計データでは捉えることのできないより定性的な給食の質を測る方法として、実際に小学校で提供された給食の画像データを使った分析が考えられる。