28期生 白川 陽聖
参議院選挙における候補者のSNS利用が得票数に与える影響
—X(旧Twitter)データを用いた実証分析—
近年、日本において選挙におけるSNSの役割は急速に拡大している。2013年のインターネット選挙運動解禁以降、候補者による SNS 活用は一般化し、ますますSNS上での発信や反応が選挙結果に影響を及ぼしている可能性が指摘されている。しかし、日本の選挙を対象とした既存研究においては、SNS利用の有無や事例分析にとどまるものが多く、候補者レベルのSNS活動と得票数との関係を計量的に検証した実証研究は、欧米諸国の既存研究と比較して十分に蓄積されていない。
本研究は、2025年参議院選挙における大都市圏6選挙区(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知)を対象に、候補者のX(旧Twitter)上での活動が得票数に与える影響を実証的に分析することを目的とする。特に、SNS活動を単なる発信量としてではなく、「ツイート数」による量的側面と、「平均いいね数」による有権者からの反応を示す質的側面に分けて捉え、その効果の差異を検証する点に、本研究の特徴がある。
OLSによる重回帰分析の結果、ツイート数についてはモデルによって正に有意となる物の、結果は安定しておらず、得票数への一貫した影響は確認されなかった。一方で、平均いいね数は全てのモデルにおいて正に統計的に有意な結果を示し、SNS上でのエンゲージメントの大きさが得票数の増加と結びついていることが明らかとなった。この結果は、SNSにおける発信量そのものよりも、有権者からの反応を伴う質的側面が選挙成果において重要であることを示唆している。また、関東4都道府県に限定した頑健性チェックにおいても同様の傾向が確認され、分析結果の安定性が支持されている。
さらに、平均いいね数の効果が候補者属性によって異なるかを検証するため、新人候補、女性候補、参政党所属候補との交叉項を含む細く分析を行った。その結果、新人候補においては、平均いいね数の限界効果が統計的に有意に大きく、SNS上での反応が得票数に与える影響が相対的に強いことが示された。一方で女性候補及び参政党所属候補については、平均いいね数の限界効果が有意に異なるとは確認されず、SNSの影響は候補者属性によって非対称である可能性が示唆された。
以上の結果から、平均いいね数は分析モデルやサンプル構成の違いに関わらず、得票数に対して一貫して正の影響を及ぼすことが確認された。ツイート数といった発信量の指標が安定した結果を示さなかった一方で、SNS上での有権者からの反応の大きさを捉える平均いいね数が頑健な推定結果を示した点は、日本の選挙における SNSの役割を理解するうえで重要である。よって、本研究は日本の選挙における SNSの影響を、量的側面と質的側面を区別しつつ、質的側面が選挙結果に与える影響の重要性を実証的に明らかにした点において、一定の貢献と知見を提供するものである。