28期生 渡邊 穣
圏央道の開通が自動車貨物輸送に与える影響
1963年に日本初の高速道路として名神高速道路が開通して以降、全国各地で高速道路の建設が進められ、現在も新東名高速道路をはじめとする高速道路が建設中である。高速道路の開通は旅客輸送・貨物輸送ともに鉄道から自動車へと転換を促進してきた一方で、2024年問題に代表されるように物流業界における人手不足が課題となっており、物流形態の転換が迫られている。このように、高速道路の開通と旅客・貨物の輸送形態には密接した関係があるが、両者の関係を定量的に分析した研究はほとんどない。そこで本研究では、2000年以降に大部分が開通している圏央道を分析対象とし、圏央道の開通と貨物輸送の関係について分析することを目的としている。
本研究では、都道府県の発着地ごとの自動車・鉄道・海運輸送量について調査した「貨物地域流動調査」のデータを用いて、2011年から2019年までの発着地別のパネルデータを構築した。分析手法として、自動車貨物輸送量を目的変数とし、処置群ダミーと各年の年次ダミーの交差項を用いた固定効果DID分析を導入した上で、発着地の固定効果や年固定効果を制御して圏央道の影響を推定することを試みた。具体的には、関東1都6県の近距離輸送を対象にした分析と、関東地方を跨ぐ長距離輸送を対象にした分析を行った。
分析の結果、近距離輸送・長距離輸送の両方において、圏央道の開通が自動車貨物輸送量に有意な影響を与えていることを確認できなかった。また、モデル全体で有意な変数が少なく、モデル自体に再構築の余地があることが示された。一方で、コントロール変数に着目すると、近距離輸送では自動車輸送と海運輸送が代替的な関係にあるのに対し、同じ陸上輸送である鉄道輸送と自動車輸送には代替関係が確認されない、という点が示唆された。また、長距離輸送では輸送距離に占める圏央道の割合が増加すると自動車輸送量が増加する、という結果が得られたことから、輸送距離のうちどの程度が圏央道開通の恩恵を受けたのかを重点的に捉えることで、新たな知見を得られる可能性が示された。
本研究の課題として、「貨物地域流動調査」の自動車輸送量が標本調査によるものであり、正確な自動車輸送量を把握できないことが挙げられる。また、自動車・鉄道ともに品目別のデータが入手困難だったことで、どのような品目が圏央道開通の影響を受けているのかに関しても分析することができなかった。加えて、圏央道のインターチェンジ間の交通量を組み込んだ分析を行い、圏央道の区間ごとの影響を分析することも、今後の課題として残されている。