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28期生 吉田 元喜

金融商品取引法改正が株式投資型クラウドファンディングの資金調達と投資家構成に与える影響

 本論文では、2025年2月に施行された金融商品取引法改正による株式投資型クラウドファンディング(Equity Crowdfunding:ECF)の投資上限規制緩和に着目し、日本のECF市場における資金調達行動および投資家構成に与えた影響を分析した。制度改正が各企業の調達総額及び平均投資額に与えた影響に加えて、企業属性のうち調達金額と関連が深いものについて規制緩和前後でその影響力に変化はあったのかについて考察している。
 分析には日本最大級のECFプラットフォームであるFUNDINNOのサイトに掲載された成立案件データを用い、制度改正後ダミーを中心とした最小二乗法による回帰分析を行った。その結果、制度改正前後での調達総額については有意な結果は得られなかった。一方、各案件の平均投資額については正に有意の効果が見られ、規制緩和が実際に投資家行動に影響を与えていることが示された。
 また、企業の調達金額に強い関連を持つと考えられる企業年齢、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)からの出資の有無、特許の有無について制度改正後ダミーとの交差項を用いて、制度改正後にその関係に有意な変化があったかを分析した。企業年齢については創業後5年未満、7年未満の二つの異なるダミー変数を用いて分析を行ったがどちらでも有意な結果を得ることはできなかった。また、CVCからの出資の有無についても制度改正の前後で調達金額に与える影響が有意に変化したという結果は得られなかった。一方で、特許の有無については正に有意な結果が得られた。これは制度改正後、特許保有による調達金額増加効果がさらに高くなったことを示している。規制緩和により可能となった大口の投資を行う際に特に信頼できる要素と考えられたなどの理由が考えられる。
 本研究の課題として制度の改正が最近のため改正後の案件数が限定的なこと、データの制約上成立した案件についてのみを分析対象としており、不成立案件を含んでいないこと、投資家の属性についての情報を集めることができなかったこと、データがFUNDINNOという単一のプラットフォームからのものに限られれるということが挙げられる。

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