3期生 清田 直博
労働時間短縮の生産性に対する影響
今回、私が労働時間短縮を卒業論文のテーマに据えたのは、来春から自分も紛れもなく労働者の一員となること、よってそのために労働者の環境が今どうであり、今後どうなるかということを知っておく必要があったという理由が大きい。最初にテーマとして選んだのは映画産業、レジャー産業についてであったが、調査を進めるうちにそのような産業が前提としている消費者の余暇、さらに余暇と逆の概念である労働時間へと興味が移っていった。このようなテーマの選定過程において疑問を持ったのは社会全体が労働時間短縮へと動いているにも関わらず、余暇が増えたと感じている人が減り、逆に減ったと感じている人が90年代前半から増えていたことである。これにはもちろん様々な理由が考えられるであろうが、「ゆとりある社会」を標榜し、労働時間短縮を進めている政府の方針とはかけ離れた結果であると感じた。余暇関連消費も政府の計画通りには増加していない。そのような疑問から労働時間短縮の実状を知りたいという欲求が生まれた。
日本では1999年までの10年間で年間約200時間という、急速な労働時間短縮が進んだ。しかし実質的な労働時間は本当に短縮されたのだろうか?企業は重要な生産要素の一つである労働の、このような減少の下で今までのように生産性を維持し、成長させることができたのか?そしてまた、個々の労働者は労働時間の短縮によって真にゆとりのある生活を送ることができるようになったのか?
この論文ではこのような疑問に答えを出すべく、各種統計を用いて実証分析を行った。