4期生 石山 久美子
海外直接投資の進出モードと組織形態が生産性に与える影響
安保[1994]によると、アメリカに進出している日系企業は、日本の競争優位を生かすために、機械や技術をそのまま適用することが多く、そのために、日本人を多く派遣したり、関連機械メーカーや部品サプライヤーを一緒に進出させたりすることが多い、という。この分析では、ヨーロッパ(EU加盟国)に進出している、電機機器、一般精密機械、輸送機産業の日系生産子会社140社で、この調査を実証する結果となった。つまり、日本人比率が大きいほど生産性は高くなり、親会社の技術集約度と日本人比率の相乗効果で生産性は高くなる。また、星野(1998)は、それまでの実証的な先行研究を、日系企業が欧米に進出する場合、完全子会社の業績は合弁企業のものよりも優れている傾向にある、とまとめたが、この分析でも同じ結果を得られ、資本参加でスタートすると、生産性は低くなっている。これは、欧米に進出した日系企業が資本参加でスタートした場合、日本の比較優位である、技術やノウハウを移転する時の調整コストがかかるためであると考えられる。さらに、進出国の製造業の投資件数が多いほど生産性は高くなり、産業別の投資件数では有意でなかったことより、これは、他業種からの技術のスピルオーバー効果によるものと考えられる。進出国の文化的要素による影響をみた分析では、日本に文化的に近いとされるドイツで生産性が高く、反対にラテン系国では生産性が低いという仮説は実証されなかった。進出国の違いによる生産性への影響は有意にみられたが、それが文化のためであるとはいいきれなかった。