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4期生 河合 秀幸

不祥事が企業ブランドに与える影響

 不祥事は企業ブランドの価値を低下させ、その回復には長い時間がかかる」。一般にはこのように考えられています。しかし、不祥事は一時的なものなのに比べ、企業ブランドは長い年月をかけ形作られ、さらに継続していくものです。確かに不祥事は一時的には影響を与えるでしょうが、長期的にみれば、その不祥事の影響はほとんどなくなってしまうのではないかと考えました。そこで、「不祥事によって減少した企業ブランドは時の経過とともにもとの水準に戻る」という仮説をたてました。この研究では、このことを実証するとともに、どんなときにブランド価値の減少が大きいか、どんなときにブランド価値が回復しやすいか、も合わせて分析しています。
 分析としては、企業ブランドの代理変数として株価とシェアを使用し、不祥事前からの減少率や回復までの年数をとりました。それらの被説明変数が不祥事の規模、内容、その企業の規模などからどのような影響を受けるのかを分析しました。
 結果としては、以下の3点にまとめられます。

1、不祥事によって減少したブランド価値が回復するという現象は常に起こるわけではないが、5割弱程度の確率で起こることがわかりました。しかも、回復までの期間は当初の予想よりも早く2年以内に回復する企業が多かったです。

2、不祥事によるブランド価値の減少が多い不祥事がどのようなものかはっきりとした結果はでませんでした。しかし、規模が大きく広告費の支出が多い企業は不祥事の影響を受けにくく、大株主の持ち株比率が高い企業ほど不祥事による影響を受けやすくなることがわかりました。

3、回復しにくいのはどんな不祥事の場合かというと、マスコミに大きく取り上げられ社会問題化したとき、企業が不手際をしたときです。また、規模が大きく広告費支出の多い企業や大株主による持ち株比率が高い企業は不祥事前の水準まで回復するのが難しいということがわかりました。これはシェアに関してですが、広告集約度を上昇させることが回復を早めることもわかりました。

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