4期生 渡部 博志
鉄道業における多角化経営の実証分析
本論文は鉄道業における多角化について、主に製造業を対象に行われている回帰分析を用いた実証分析の手法を用いて、その誘因や結果を分析するものである。
多角化のメリットとしてあげられているリスク分散が鉄道業の多角化においてなされているかという仮説に対して、逆にリスクが増大しているという結論を得た。これは鉄道事業が持つ産業特性に依存している面がある。では多角化を進める誘因は何かという仮説をたて実証した結果、製造業で行われている先行研究とほぼ同じ結論に達し、本業である鉄道事業の成長率が低いほど、そして利益率が低いほど多角化を進めるということが実証された。また同時に鉄道業特有の観点から地域特性について多角化の誘因を検証した結果、都市路線を持つ企業ほど多角化を進め、また定期券利用客の割合が増えるほど多角化は進まないという結論に達した。
最後に多角化による成果を売上高営業利益率で見たところ、本業である鉄道事業の割合が高いほど連結指標で見たグループ全体の利益率が高く、不動産事業も利益率を高めることに貢献していることが実証された。