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4期生 吉田 豪

日本企業の地球環境問題への対応

 ここ数年、地球環境問題が深刻化するなか、企業はその影響力の大きさから、対応が注目されている。本論文では、まず根本的な問題として、企業の本来の目的である利益の追求と、環境保護という一見相反する二つの活動を両立することができるのか、という疑問を提示した。その上で、「環境経営」とは何か、「環境経営」度とは何かということを具体的な過去の研究などを示しながら明確にした。
 つぎに、企業の環境情報開示の手段である環境報告書と、環境に関するコストの管理ツールである環境会計に注目し、これらが持つ特性などを解説した。具体的には、①環境報告書は企業にとって戦略としての情報開示の重要な媒体であり、また周囲からの要求もあって公開が前提となっていること、②環境会計は内部管理ツールとしての色合いが強いこと、③報告書、会計ともに企業間の比較検討がまだ困難であること、が言えた。また、日本国内と欧米諸国とでは状況が異なるため、欧米の環境問題に関する動向を、いくつかの例を交えながら論じた。その結論および展望としては、日本に比べ、欧米の環境先進国では政府、企業、市民、投資家など様々な立場の者が環境問題に強く関心を持ち、主張や行動を繰り返している。よって、もし日本企業が真のグローバル化を図るのであれば、周囲に認められるだけの対応が不可欠である。
 第3章で先行研究を踏まえ、つぎの仮説および実証分析へと移る。仮説として、「環境報告書(環境会計)を早期に作成開始した企業は、①規模が大きい、②利益率が高い、③輸出比率が高い、④外人持株比率が高い、⑤宣伝広告費比率が高い」を提示した。ロジット・モデルを用いて、1998年以前に作成開始した企業を1、それ以外を0とした被説明変数を置いた上で、説明変数として①から⑤を表す変数を作成した。回帰分析の結果、報告書の①、④、⑤と会計の ①は支持されたが、その他は逆の結果もしくは説明力を持つに至らなかった。考察としては、やはり規模との相関は明らかであり、また環境報告書と環境会計の公表に関する基本的な性質から、異なった分析結果がもたらされ、説明力のなかった変数に関してはそれなりの理由が見出せる、ということであった。最後に、結論と展望を述べて終えている。

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