5期生 カンタロット・ラッタナブリ
企業規模間の生産性格差の決定要因
本論文は、1990年代製造業における企業規模間の生産性格差について、実証分析によってその決定要因を複数の側面から究明するものである。
分析を行ったところ、市場構造や産業特性といった要因は土井(1992)の分析結果とほぼ同じ結論に到達し、やはり生産性格差は市場構造(集中度など)と産業特性に依存しているということが実証されたが、市場集中度が著しく高い水準のマイナス有意性を示した。この変化は90年代を通してみられた統合と合併が原因で企業の市場支配力が一層強力に働くようになってきたからと考えられる。また、下請け比率がそれほど大きい影響力を持たないが、どちらかというと相対生産性を縮小する働きが確認された。このような予想外の結果はサンプルの捉え方に原因があると考えられる。なぜかというと、三桁分類の同一産業内には発注先の大企業と受注先の中小企業が両方同時に存在する可能性が高いからである。
最後に、輸入品の国内市場への参入の影響に関しては、予想通りの符号をもつ係数を得たものの、本稿における分析の枠組みではその影響力の程度を明らかにすることができなかった。この結果に関しては関連分野の先行研究によって提示された、輸入と価格低下の不安定な関係等で説明を試みた。