5期生 村崎 理恵
コーポレート・ブランド形成要因に関する考察
本論文は、どのような要因が、企業イメージ・企業ブランドという、いわゆる“コーポレートブランド価値”を形成するのか、について実証分析を行なっている。そして、それらを明らかにした上で、顧客と株主という、異なる二つのステークホルダーにとって、コーポレートブランド価値形成要因にいかなる違いがあるのか、ということについて分析している。
企業イメージに関するこれまでの研究では、アンケート調査やケーススタディによるものが多く、サンプル数の不足・被験者の偏り・企業イメージの客観的評価の欠如という問題は否めなかった。本論文では、近年、伊藤邦雄氏が考案した、企業のブランド性を主観的かつ客観的に捉えた、“CBバリュエーター”を用いることにより、これらを解決したといえるだろう。
第Ⅲ章ではまず、顧客に焦点をあてた。企業イメージをマーケティングイメージ・技術イメージ・経営革新イメージ・安定拡大イメージの4つに分類し、それぞれ、広告費・研究開発集約度・海外売上高比率・市場シェアを説明変数にとった。研究開発に熱心な企業を高く評価し、商品を見る目が肥えてきたとはいえ、私達消費者は、昨今の情報化社会の中で、広告や国際性、規模の大きさといった、イメージに多いに左右されてしまっていることがわかった。一方、第Ⅳ章では、株主に焦点を当てているのだが、顧客とは異なり、株主は、平均株価や負債比率など、株価データや財務諸表といった、具体的なデータをもとに、企業評価をしていることがわかった。
本論文は、2000年度のコーポレートブランド価値を対象としたのであるが、分析から、「2000年」という時代に生きる私達の興味深い姿が浮かび上がってきた。情報化が進み、商品の比較や前評判の入手が可能になったにも関らず、それらを時間的ロスと捉え、イメージに左右されている現状。そして、不況下において、ギャンブル的投資は避け、財務的に安定した企業を好む傾向。これらは、まさに2000年を象徴しているといえるだろう。サンプル数の不足という問題は、やや残ってはいるが、時期を変えて、同じ分析を行なってみても面白いであろう。