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5期生 高井 泰央

製造業における合併が雇用に与える影響

 本研究は、従来の先行研究が合併を行った企業のパフォーマンスに正の影響を与えていないことを示している中で、企業が合併を行う一つの指標として、合併後に雇用を削減し効率を高めているのではないかということを検証した。そのため、1985年から1997年までの間に合併した製造業のデータを用いて、企業合併が雇用に与える影響を実証分析した。
 その結果、水平合併は雇用を削減して効率を高め労働生産性も高めていること、子会社を多く持てる大企業ほど女性労働力を多く削減し効率を高め労働生産性も高めていること、子会社を吸収する合併は予め効率が達成されているので男性労働力を増やしていること、90年代の合併は女性労働力を多く削減して効率を高め労働生産性も高めていること、効率化を目指し労働生産性を上昇させる効果は短期間しか及ばないことが実証された。また、分析結果から、合併後には企業のパフォーマンスが悪化していることも含意されている。
 これにより、製造業における合併では、雇用を削減し効率を高め労働生産性も高めていることが実証された。最近になって企業のリストラクチャリングが目立つようになったが、この結果が示すように、製造業における合併では80年代後半から実際に雇用を削減していたのである。この結果が持つ含意は、合併を行う企業にとって、余分な労働力を削減してコスト削減を達成させ、効率を高めることが合併戦略の一つとして認識されていたことである。
 しかし、この結果を見る限りでは、合併企業が子会社や関連会社に社員を派遣して雇用を削減しているのか、早期退職を促して雇用を削減しているのか、新卒採用者数を減らして雇用を削減しているのかはわからない。今後の課題として、合併企業がどのように雇用を削減しているのか、どの年齢層を多く削減しているのかということが残った。

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