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6期生 黒澤 主計

メインバンクによる役員派遣の決定要因
〜製造業と非製造業間の比較分析〜

 本論文では銀行介入型ガバナンスシステムが90年代において、財務危機企業に対し具体的にどのような形で機能していたかを分析することを主な目的とする。
 多くの先行研究では70、80、90年代と時を経るにつれメインバンクによる企業救済機能が弱まってきたという結果を見ているが、同じように企業救済機能が弱まっているにも関わらず、90年代初頭のバブル崩壊以後、会社更生法の適用など上場廃止に追い込まれた企業の大半が不動産業などの非製造業であり、業種間において倒産件数に大きな開きが出ている。本研究では90年代の日本企業において、メインバンクによる財務危機企業に対する役員派遣状況が、製造業と非製造業の間でどのように異なっているか見る事を中心に据え、どのようなタイプの企業に銀行が役員を派遣されているかを見ていく。
 分析方法としては期間をバブル後の1993年から1997年までにとり、メインバンクからの新規役員派遣を被説明変数、企業と銀行のつながりの強さ、企業規模、企業パフォーマンスを表す諸変数を説明変数とし、メインバンクの役員派遣の決定要因がどのようなものかを検証していく。しかし、実証分析の結果、製造業では規模やパフォーマンスの点で有意な結果を見たものの、非製造業では目に見えて有意な結果が出なかった。
 メインバンクが非製造業においては製造業と異なる対応をしていると見て、説明変数にROE、キャッシュフローなどの変数を加えるといったようにモデルを変更し、その結果企業パフォーマンスを表すこれらの変数により役員派遣の決定要因を見ることができた。結論としては製造業においては企業規模が大きくパフォーマンスが低下した企業へ派遣が行われ、非製造業においては同じく企業パフォーマンスが低下した際に役員が派遣されているものの、製造業とは違い、企業の存続に必要なラインを下回っていると考えられるものへ役員が送られていると見ることができた。これらの違いはバブル崩壊後の日本経済において製造業の方が業績の回復が早く、銀行が利益を追求する主体としてより確実に収益を得られる企業と優先して関係を持とうと行動していた結果生じたものと考えられ、近年銀行が近視眼的な行動をとっているという事実の一端を垣間見ることができた。

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