7期生 朝田 隆介
日本企業の海外投資におけるバンドワゴン的行動性行
本論文ではタイ・マレーシアにおける日本電気機器大手9社の海外投資件数データを用いて、日本企業のバンドワゴン的海外投資性向を検証した。東南アジアへの海外投資の初期段階である1960年〜1980年に時期を絞り検証した結果、タイ・マレーシアにおいてもバンドワゴン的投資性向が見られることが実証された。また、実証分析は出来ていないものの、投資目的においてもライバル社の投資目的を観察し、それに倣って追随している可能性を示した。
先行研究から、バンドワゴン的海外投資の背景として「同等の資源を有し差別的優位を築くことが出来ない場合、企業間の激しい競争バランスが崩れるリスクを恐れるため、ライバルと同じ行動を取る」、「不確実性を除去するために情報を自ら収集する代わりに他社を模倣する」ことが挙げられた。私は特に後者の理論に関心を持ち、本論文に反映させた。極めて大きな情報の不確実性に直面する海外投資の意思決定の際には、他社の動向を観察して追随するという方法は、リスクが少なく収益を上げられる確率が高い投資スタイルと言える。また、バンドワゴン的に投資した先で産業集積効果が働けば、その地で成功する可能性が高まる。私が訪れたマナウスにおいても分析で用いた東南アジアにおいても、バンドワゴン的投資で進出した日本企業は現地で成功している。
一方、バンドワゴン的海外投資戦略の弱点も本論文では指摘した。日本企業の海外投資額は他の先進諸国に比べると圧倒的に少ない。今後積極的に海外投資を断行していかねばならない環境に置かれた際、バンドワゴン的な海外投資戦略に頼ってしまったら、このリスク低減戦略がアキレス腱になりかねない。近年外資系企業によって、コンサルタント機能やM&Aのノウハウが日本に持ち込まれるようになっており、こうした外国からの技術を活用して海外投資におけるリスク低減を図ることは有効だと思われる。