7期生 小島 有
株価形成における連結会計情報の優位性
近年、日本では企業の多角化や経済のボーダーレス化を背景に、会計ビッグバンと呼ばれる会計制度の劇的な変更が図られている。また、バブル崩壊後に露になった企業の弱さや持合株式の解消、粉飾決算等をはじめとする企業の相次ぐ不祥事などの下で、市場は企業が真の姿を公表することを強く期待するようになっている。そのような中で見直されている会計制度の一つが、2000年3月期より公表が義務付けられた連結財務諸表である。日本では従来、個別会計情報が財務情報の中心におかれていたが、近年は連結会計情報が中心におかれるよう変更されてきている。そこで本論文では、日本において、連結情報は個別情報に比べ投資家の投資意思決定に資するものになっているか、また更に、企業の統治構造によってどちらが重視されているのかが異なっているか否かを検証した。分析は、連結情報と個別情報のどちらが株価形成の説明力を有しているか、また企業の外国人持株比率の違いによりその結果は異なるか、という視点で行った。
結果として、日本においては1990年代の前半は連結情報に比べ個別情報が株価への説明力を有していたが、半ば以降は連結情報の方が説明力を有していることが検証された。また、外国人株主持株比率が高い企業は、1990年代全般を通して連結情報の方が優位であったということが検証された。この結果の意味するところは、投資家側は投資意思の決定に際し、1990年代半ば以降は市場全体としては企業の事業成果を、個別の企業ではなく企業グループ全体の活動で捉えようとしているという姿勢が伺えるということ、また、外国人株主持株比率の違いにより企業評価の指標が統一されておらず、企業間の比較可能性が損なわれてたるということである。企業は、企業グループ全体の成果を示す連結会計情報を投資家の意思決定情報に用いられるよう、連結重視のディスクロージャジーを投資家へ促す更なる努力が求められるであろう。