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7期生 森川 道裕

環境パフォーマンスが株価に与える影響
〜イベント・スタディーによる実証分析〜

 近年、企業の様々な環境への取り組みが注目を集め、新聞やテレビなどのメディアで紹介される機会も非常に多い。本論文では、こうした企業の環境への取り組みが株式市場で評価され、株価に影響を与えるのかどうかを実証分析する。具体的には、日本企業を対象に、環境パフォーマンス(企業の環境問題への取り組み度合い)が向上したことをアナウンスする記事が新聞に掲載された際、掲載日前後に株価が上昇するかどうかをイベント・スタディーの手法を用いて実証分析した。イベント・スタディーについては第4章で詳しく述べられている。まず環境パフォーマンスの基本的な概念を説明した上で、環境パフォーマンスの向上がいかに株価の上昇につながるのか、という理論的根拠を第1章で示した。次に第2章では、アメリカ企業を対象とした分析では環境パフォーマンスの向上が株価を上昇させることが実証されていることを紹介した。
 実証分析の結果、日本においては、環境パフォーマンスが向上したことを示す新聞記事が掲載されても企業の株価は上昇しないことが判明した。この理由は2つ考えられる。一つ目の理由は、日本の株式市場は流動性が低く、新聞記事が掲載されても株価が敏感に反応しなかった、ということだ。アメリカの株式市場は日本に比べて株式の流動性は高いと考えられるので、この点がアメリカの先行研究による分析結果との相違をもたらしたと考えられる。第二の理由は、環境パフォーマンスの向上をアナウンスするプラスイメージの記事のみをサンプルとして使用したことである。環境パフォーマンスが向上しても将来的に財務パフォーマンスが向上することは「確実」ではないために、株価は上昇しにくかったのではないか。

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