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7期生 中川 学

患者数の地域別決定要因
〜都道府県別データによる実証分析〜

 高齢化の影響に伴い、国民医療費が年々増大している。国民医療費を「一件当たり医療費」×「受診件数」と分解し、その原因の一つとなっている「受診件数」すなわち「患者数」に焦点をあて、その決定要因を探っていく。これまでの研究を踏まえ、OECD諸国の医療費変動分析で利用される医療支出のアプローチと同様の方法によって、患者数の決定要因を考察した。ここではデータ間の整合性を得るために平成14年度の都道府県別データを用いている。
 私的病院」が経営的に自由が利くため、「私的病院のシェアが高い地域は、一人当たり診療費の高い高齢者の入院患者が人口に対して相対的に多い」ということを仮説として提示し、最小二乗法による線形分析および対数線形分析を行った。被説明変数には対10 万人当たり患者数を示す「受療率」を用い、説明変数には「私的病院のシェア」を用いた。正確性を期すため、入院医療においては「私的病院の病床数のシェア」を用いている。コントロール変数としては、所得、医師数、技術力という、医療支出の推定でしばしば採用されている基本的なコントロール変数を用いている。結果として仮説は有意に検定されたため、これにより高齢者入院医療における報酬を低くすることにより、私的病院の特化を抑制することが考えられるという政策を示した。
 さらに、これまでの「国民医療費」を用いた研究結果と比較することで、新たに「県民所得の高い地域では患者数は少ないが、医療費は高い」と言うことができる可能性を示した。ここで、患者の内訳を一定と仮定した場合に得られるインプリケーションは「県民所得の高い地域では少ない患者が多額の医療費を使っている」というものであろう。このように、県民所得の格差が患者行動に対して原因の一つとなっていることも論じている。

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