7期生 品川 潤
合併アナウンスメントの株式市場への影響
〜イベントスタディによる実証分析〜
1990年代に入り、SONYの米Metro-Goldwyn-Mayer(MGM)の買収をはじめ、数々のM&A、業界再編が行われてきている。そこで、私はまずM&Aの影響とはどのようなものか、というところに注目した。そこで本論文はM&Aの中でも合併のアナウンスメントが株式市場に与える影響について、イベントスタディを用いて分析した。
そこで、まずは、第1の研究として、被説明変数にアナウンスメント効果の代替変数として累積異常収益率(CAR)を用い、それを取締役持ち株比率、外国人持ち株比率、被合併会社の自己資本比率、救済合併ダミー、新聞掲載文字数、新聞1面ダミーの5つの説明変数と、総株主数の自然対数、水平合併ダミー、垂直合併ダミーの3つのコントロール変数で説明するモデルをOLS分析した。その結果、取締役の持ち株比率と新聞の1面に載ったかどうかのダミー変数が正に有意となった。つまり、取締役がより多くの株を持っているほど、また、新聞に大々的に報道されるほど、アナウンスメント効果は高くなるということが明らかになった。
次に第2の研究として、アナウンスメント効果とその後の企業の業績の整合性を確かめるべく、存続企業の合併直前期のROAと1年後、2年後、3年後のROAの差をそれぞれとった値を被説明変数にとり、CARを説明変数、合併直後の存続企業の総資産の自然対数、水平合併、垂直合併、救済合併のダミー変数の4つをコントロール変数とするモデルをOLS分析した。その結果、3年後ROAより、2年後ROA、2年後ROAより1年後ROAのほうが、有意水準が高くなるという結果になった。つまり、アナウンスメント効果は、より近い将来の業績改善を表している、もしくは投資家はそれほど長期的に株を保有するつもりがなければ、そもそも長期的な利益には関心を持たないのではないかと考えた。