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7期生 田中 隆悠

現代日本における小売店舗密度の減少要因について
〜市・区データによる実証分析〜

 21世紀に入り、日本の小売業界が大きな変革期を迎えている。流通ナンバーワンの名をほしいままにしてきたダイエーはじめ、長崎屋やマイカル、そごうなどが経営破綻に陥っている。いずれの企業もかつては「流通革命」の先頭を走る革命戦士だと称され、経営拡大に邁進した。そしてこれら大規模小売店の繁栄と時期を同じくして、日本の小売店舗数は1982年の約4万店をピークに、一貫して減少を続けてきた。
 その要因を探るべく、丸山雅祥(1992)、向山雅夫(1989)、番場博之(1999)の先行研究に基づいて以下のような仮説を提示し、1994年から2002年までの全国における市・区部のパネルデータを用いて検討した。

仮説①日本の小売店舗密度低下は、消費者の移動コストならびに在庫保有コストの低下による。
仮説②日本の小売店舗密度低下は、所得の低下ならびに生産性の上昇による。
仮説③日本の小売店舗密度低下について、大規模小売店舗密度の変化による規定関係は強くない。

 留意すべきことに、一部変数データが他の変数データと時間的に完全にはマッチしていないことや、変数のとりかたが本当にこれで正しかったのかということ、飲食料品が長く保存される財であるのかどうかという疑問が挙げられる。
 結果は、①物流コストという視点にたち、消費者の在庫保有能力および輸送能力が上昇したためにそれらのコストが下がり、店舗密度が低下したのだということが確認された。②生産性が店舗密度に負の影響を与えるという部分のみが確認されたが、所得が店舗密度に与える正の影響については確認されなかった。 ③大規模店舗の与える影響はうまく確認されなかった。

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