8期生 榎 祐一郎
情報化投資が労働生産性に与える影響
IT投資の生産性への寄与は、企業レベル・マクロ経済レベルでは確実に存在するという共通の見解が出来つつある。一方、産業レベルではデータの制約から生産性への寄与は確定されていない。
そこで本研究では運輸産業という特定の産業を対象に、企業レベルのデータを用いて、情報化投資が企業の生産性にどのような影響を与えているのか、について分析を行っている。
情報化投資の指標としてソフトウェア資産変化率(t年のソフトウェア資産をt-1年のソフトウェア資産で除した値)を使用し、これを説明変数としている。また、被説明変数は労働生産性変化率(t年の労働生産性をt-1年の労働生産性で除した値)を用い、説明変数以外の要因をコントロールするため資本集約度変化率、企業規模変化率をコントロール変数として用いている。
分析対象は1999 年から2004年までの運輸産業81社(陸運産業37社、倉庫・運輸関連企業44社;サンプル数168)で、非バランスパネル分析を行った。その結果、ソフトウェア資産変化率は労働生産性変化率に対して負に有意である事が判った。この原因としてはタイムラグを考慮していないこと、ソフトウェア資産の質の違いが存在すること、主要取引先との関係が強く影響しうることなどが考えられる。