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8期生 平松 大典

M&A実施企業の財務的要因の分析

 本研究は、M&A実施企業にはどのような特徴があるのかを財務的側面から明らかにすることを目的にした研究である。まず、M&A(merger and acquision)とは企業の合併及び買収のことである。M&Aには様々な形態があるが本研究で対象とするM&Aは、資本移動を伴わない提携を除いた狭義のM&Aから分割を除いたものである。
 合併前と合併後で当該企業のパフォーマンスなどにどういった変化が考えられ、現実に変化が見られるかについて様々な研究がなされてきた。しかしながら、筆者の知る範囲では、合併を含むM&Aを実施する企業はどういった特徴を持つ企業であるのかは明らかにされていない。本研究はM&A企業の特徴を明らかにしようとして、財務面に着目するものである。
 M&Aにはメリットが様々にあるが、際限なく行なってよいものではないし、行なえるものでもない。本研究では、M&Aを制約する条件(自らの財務的制約、対象企業の存在)のうち、M&A企業の財務的側面に焦点を当てて研究する。
 Levine, and Aaronovitch (1981)は、英国の企業のうち1972年にM&Aを実施した企業について、財務指標等をM&A実施企業・M&A対象企業・実施+対象企業間で比較した研究である。本研究では、この研究で用いられた指標を主に用いた。先行研究との大きな違いは、新規上場企業のみを対象としていることである。新規上場企業だからといって、M&Aの実施割合が高いわけではない。しかし、同時期に新規上場したという点で条件を揃えるために、 2001年新規上場企業を研究対象とした。
 プロビット分析を行なったところ、ほとんど有意な結果は得られなかった。有意水準の低い説明変数について解釈すると、株式時価総額の高いほうが、すなわち株式市場からの評価の高いほうが、M&Aを実施していることになる。株式交換を用いてのM&Aを実施する場合に株価が高いほうが良い条件でM&Aを実施できることを根拠とした仮説を実証するものである。
 そもそも、新規上場企業に研究対象を限定した根拠に無理があるとも考えられる。今後の課題として、データでは新規上場企業のM&A実施と上場企業全般のM&A実施とでは1企業あたり件数の面で違いがないため、新規上場か否かに拘るよりも、企業を産業ごとにわけて考察することがある。

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