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8期生 津曲 藍

純粋持株会社制の有用性

 1997年の純粋持株会社解禁以後、多くの企業が純粋持株会社制を用いたリストラクチャリングを実施している。この組織形態は、(1) 戦略的グループマネジメントと事業マネジメントの分離、(2) 円滑な人事・労務管理、(3) 企業グループの再編成の柔軟化・多角化の促進といった有用性をもたらすと考えられる。本論文は、純粋持株会社制の採用によってこれらの有用性が発揮され、ひいては企業パフォーマンスが向上したか、そして採用の際のどのような要因がパフォーマンス向上に特に貢献しているか、さらにカンパニー制の採用がパフォーマンス向上に貢献しているかについて実証分析を行った。パフォーマンスを表す指標として、利益率、労働生産性、成長率それぞれの相対的指標(=純粋持株会社企業の値からペア企業の値を減じたもの)を用いた。移行の際の特徴として、移行タイプ(経営統合を伴ったか否か)2種類、採用目的4種類の計6種類を表すダミー変数を分析に用いた。この結果、純粋持株会社制採用は年数の経過と共に効果が表れる可能性は否定できないものの、全般的にはパフォーマンスへの正の影響は検証されなかった。しかし分析を細分化すると、M&Aのコストや摩擦回避、各傘下企業の自主独立性向上や協力体制強化、そして従業員の士気向上といった効果がパフォーマンス向上に寄与している可能性が示唆された。

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