8期生 山盛 貴史
大店法改正の小売業経営への効果
規制緩和などによる競争の導入は、既存企業の効率性の向上をもたらすと一般的には考えられている。このような効率性の向上は社会的に望ましいことである。本論文では、規制緩和による経済効果について、日本の流通小売業に着目して分析している。わが国の流通分野の非効率性の原因のひとつとして常に問題にされてきた大規模小売店舗立地法の規制緩和と廃止は、小売業経営に対してどのような影響を与えたのであろうか。本論文の分析では、食料品専業スーパーの個別店舗のデータを用いて、各店舗の効率性の決定要因が規制緩和の前後でどのように変化したのかを分析することにより、規制緩和の影響に対する考察を加えている。今回の分析により、90年代の大店法を中心とした一連の規制緩和は、既存小売店に対して効率性の上昇をもたらすことはなく、むしろ小型店舗の競争力や商業集積効果などの低下をもたらしていることが明らかになった。このような状況は、駅前商店街などに立地する個人経営を中心とした中小小売業の衰退を促進することが予想される。