9期生 小林 亮
近年の出生力の動向
〜市町村データに基づくOLS分析〜
日本の出生率の低下が叫ばれて久しく、実際、2005年には日本の合計特殊出生率は1,26まで落ち込んでいる。このままの状態が継続すれば、将来は生産特殊人口と従属人口がアンバランスになり、一人当たり社会保障負担が増大し、長期的には経済成長にも悪影響があると言われている。こうした状況を受けて、政府、自治体、企業が一体となって少子化やそれに伴う子育て、社会的環境作りといった課題に取組もうとしている。
本研究では、そうした政策の大元となる出生率に影響を与える要因を全国市町村ごとに探ろうとするものである。そこで、その要因となる説明変数に市町村ごとの平均所得、平均地価、婚姻力、全産業に占める第三次産業割合を取り、出生率を被説明変数とするOLS分析を行うことにした。その背景には、出生率の市町村ごとの大きなばらつきや先行研究における結果を考慮している。
分析結果としては、市町村における出生率には、婚姻力、第三次産業割合がプラスに、平均所得がマイナスに寄与していると結論付けることができる。また、平均地価の居住費要因は有意な結果が得られなかった。
特に婚姻力が出生率に大きく影響を与えており、結婚しやすい環境を整えることで、地方都市と言えども、出生率が高まる可能性はある。そのため今後は出生率が比較的高い地方都市の政策・取組みを詳細に分析してみるのも一つの手だと言える。
本研究では、データの制約上、家計データを使用することは叶わなかったが、出生という家計における個人間の選択を考えると、今回の分析が必ずしも適切であったとは言い難い。また出生に関する分析には、経済学的分析に加え、社会学的、生物学的、歴史学的観点を含めたアプローチも必要となるだろう。冒頭に述べた取組みの今後の結果を含めて、本研究の課題とする。