10期生 新田 志帆
コンテンツ産業の規格選択要因
―ゲーム産業における分析―
本論文は、コンテンツ産業においてハードウェア市場に複数の規格勢力がある場合、その規格選択がどのようになされているのか、その要因について分析している。
Robert Axelrod (1995) を先行研究とし、対象産業をハード市場(テクニカル・ワークステーション)からソフト市場(ゲームソフト)に移している。仮説としては、ソフトウェアを配給する企業がある規格を選択する際の効用は、その規格グループ全体の規模に比例し、その規格内の他のタイトルの規模に反比例する。特に、同一ジャンルのタイトルによって失われる効用よりも、異ジャンルのタイトルによって失われる効用の方が大きい。
分析方法は、効用関数に基づいたグループ構成エネルギーを定義し、そのエネルギーが極小値をとる組み合わせをナッシュ均衡と定めた。この効用関数は、グループ内に複数のジャンルが並存することによって失われる効用に焦点を当てている。よって、効用関数は各タイトルのジャンル区分とその推計シェアの2変数に基づいた関数となる。推計されたグループの組み合わせは、ナッシュ均衡(どのタイトルも違うコンソールにスイッチするインセンティブを持たない)となり、この結果は概ね現実と整合的であった。
本分析では家庭用据置き機向けのソフトタイトルにおける、1995年度上位15タイトルを対象に、ハードウェア市場の異なる規格(スーパーファミコン・プレイステーション)に対する各タイトルの規格選択を分析している。