9期生 佐藤 勇起
リコールが株価・企業パフォーマンスに与える影響
近年、日本の自動車市場ではリコール件数・台数ともに増え続けている。また大規模なリコール隠しも立て続けに発覚して、メディアはリコールをニュースとして頻繁に取り上げるようになった。人々のリコールに対してのイメージも悪くなってきているように思う。株主はこの問題をどのように見ているのであろうか。本論文ではこの疑問を解決するために、リコールと株価の相関を見る。本論文ではリコールと株価の相関を見るのに、株価低下分析とイベントスタディ分析の2つの分析を行った。株価低下分析では被説明変数に株価の減少率をとり、説明変数に株価低下の要因の指標を入れて分析を行った。イベントスタディ分析ではリコールのアナウンス日をイベント日として、イベント日の前後で株価の収益が通常と比較してどのように変化しているかを見た。
結果は以下の点である。
1.株価低下分析では実際に株価が下落するのが全体の約6割で、かつ平均して1.2%しか株価が低下していないということが分かった。またリコールの規模の大小・アナウンスの大小と株価の減少率とは相関がないということが分かった。
2.イベントスタディ分析では大規模なリコールを対象に株価の変化を見たが、リコールと株価の変化には相関がないということがわかった。
3.リコール隠しを対象に行ったイベントスタディ分析では、株価が大幅に低下するものがあった。
以上から日本の自動車市場において株主はリコールに対して厳しい反応を示さないということがわかった。またリコール隠しについては、大幅に株価を低下させているものがあったため厳しい反応を示す可能性があるということがわかった。