故津田眞澂教授(1926~2005)の一橋大学(1970年4月~1989年3月定年退官)に於けるゼミナールのOB会。
ご夫妻のお名前にちなんで「しんめい会」とし、OB会報『しんめい』を1976年7月10日に創刊。
追悼特別号『しんめい14号』を一周忌(2006年9月2日)に発行。
なお、現役学生の研究論文集として『別冊しんめい』を1983年から発行。
2006年7月9日にホームページ開設
1985年3月31日発行
一橋大学学園史編纂委員会 『一橋のゼミナール 戦後偏 下』 P.227-P.229より。
『キャプテン・オブ・インダストリーをめざして』
ゼミナールのテーマは「人事労務管理および労使関係」であるが、最大の悩みは学生が人事労務管理にも労使関係にも未経験であり、また会社への採用面接試験において、面接者が人事担当者であるために、学生にひととおりの知識と思想を身につけさせておかないと「ゼミで真面目に勉強しているのか」ととっちめられてしまうことである。そこで私のゼミナールでは「キャプテン・オブ・インダストリー」の基礎養成を目的として次のようなスケジュールで学習することを定めている。
1. 第三学年次でゼミナールヘ入る選考をするが、その際には関係専門傾城の一冊の著作の事前学習を指定して、選考面接ではその学習結果の理解度を問う。なお、選考は四年生がおこない、チームワークが組める人材であるかどうかについても審査する。
2. 三年生は夏休み前(四月―六月)は基本文献を読破する。週四回、ゼミナールをおこない、そのうち三回はサブ・ゼミとして院生をチューターとして多数の基本文献を読む。なお、この期間にしんめい会(ゼミナールOBの組織)メンバーに世話をしてもらって会社・工場見学をおこなう。
3. 七月に神戸大・大阪市大と共に「三商大ゼミ」の経営学部門に参加・報告のために四年生か合宿するので、三年生もそれに参加する。
4. 九・十月は四年生が就職準備活動に入るので、この期間はマネジメント・ゲーム(MG)を連続しておこない、経理・財務等の知識を習得する。
5. 十一月には、私のゼミナールが「京浜十二大学、日本的経営学生研究会」の世話人をしており、十二月に研究会が開かれるので、その研究発表の準備に入り、十二月中旬に研究会が開催される。
6. 二月からは再び基本文献の学習に戻り、三年次を終る。
7. 第四学年次に入ると、七月の三商大ゼミにおける研究発表を目ざして週四回のゼミ学習を六月まで続け、七月初めに三泊四日の合宿をおこなって報告書を準備する。
8. 就職間題が落着した十一月初旬から、最近のすぐれた著作をえらんで翌年一月まで学習を続ける。この間に、一~二回、卒業論文指導をおこなうが、あくまで最後の日まで学習を続けることを基調にしている。
なお、しんめい会は年二回、集会をおこなうが、とくに九月の集会では就職前という意味もあって、三、四年生を卒業生に紹介することに重点を置いている。
三月には四年生の卒業祝を兼ねてゼミ旅行をおこなうが、そのさいには全員で経営戦略シミュレーション演習をおこなってゼミナールの最後の仕上げをおこなう。
ところで、私のゼミナールの特色といえば三つあると思う。第一には、以上のようにきわめてハードなスケジュールで二ヵ年を過ごすということであり、とくに体育会所属の運動部の学生にはきついゼミになっている。だがゼミテンの大半が運動部の学生であることもめずらしいと思う。以上のスケジュールは私か外国にやや長期にわたって滞在した年以外にはくずれていない。
第二の特色は、卒業以後の方がゼミ学生との関係が濃くなることである。しんめい会の存在の意味がここにある。私の専攻が人事労務管理であることから、入社後のあれこれの相談がひきもきらないのは当然のことであろう。われわれ夫婦はこれを天職と考えている。
ゼミナールも毎年続けていくと最初の卒業生との間にどうしても距離が出てくる。この距離を少しでも埋めるために、三商大ゼミや日本的経営ゼミでゼミテンが発表した報告の中ですぐれたものを「しんめい会別冊シリーズ」として印刷して全員に配布することにしている。OBと現在のゼミテンとの間の接触を密にしていることは第三の特色だろうと思う。
|