



別董大 董大に別る 高適
十里黄雲白日曛 十里の黄雲 白日曛る
北風吹雁雪紛紛 北風 雁を吹いて 雪粉粉
莫愁前路無知己 愁うる莫かれ 前路に知己なきことを
天下誰人不識君 天下 誰人か 君を知らざらん
空には、十里のかなたまでも重苦しい黄塵が立ち込め、輝く太陽さえ、暗く淡い。 北風は空ゆく雁を激しく吹き送り、雪は粉々として降りしきる。 君よ、これからの旅路に親しい友がいないなどと嘆くには及ばない。天下に君の名を知らぬ者は、一人としていないはずではないか。
高適 七〇七?~七六五?
字は達夫(仲武とも)。 忠と諡される。滄州渤海(山東省浜県)の人。有道料に推挙され、封丘の尉となる。 左拾遣、監察御史、諌議太夫、准南節度使等をへて、成都の尹、剣南西川節度使となる。 後、刑部侍郎、散騎常侍から渤海侯に封ぜられ、没後、礼部尚書を贈られた。 性格は豪放闊達、任侠放浪の生活から学問に進み、五〇歳にして初めて詩を学んだともいう。辺塞詩にすぐれ、沈痛慷慨の詩風は、岑参と並んで「高岑」と称された。『高常侍集』八巻がある。(巻二一一、3-2189)
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