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追い越して行く。ところが坂道にかかると案の定一度開いた距離がグングン狭まり、丁度坂の中程で、ギャをセカンドに落としてウナリを立てているランブレッタをトップのまま50キロ近いスピードで軽々と抜いてやった。

 

後記:日中は乾き切って「茫漠としてとりとめのない」同じ風景が、早朝の光線加減では「一つ一つ
うき上がってはっきりと生気があふれ」て見える。後年微妙な光線具合を選びながらシャッターチ
ャンスを狙う写真趣味の醍醐味を聞かされましたが、その美的感覚がこの文章に生きています。
ランブレッタとの競争の描写には、負けず嫌いの上保青年の姿が彷彿されます。温厚な人の印象
が強い彼が併せ持っていた意外な一面です。

この旅行で使用したラビット・スクーターは、アンデスの高地走行を可能にするため、平地での最
高速度は
80キロ/時に調整されていました。

2000年3月 楠木 孝雄 記
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