直線上に配置

サンパウロ州を走る

 

いよいよ僕たちのスクーターによる南米横断旅行も最後のコースに入った。これから約一週間の予定でサンパウロ州内の日本人移住地を二千数百粁にわたって訪れるわけだ。僕等の旅行目的の一つは「移民との交歓」である。チリ、アルゼンチンの悪路を切り抜けて来た僕等にとって、ブラジルは楽しい。なぜならサンパウロ州内の道路はロスアンゼルスのハイウエイにも負けないくらい立派だという話だから。(実際に走ってみると、それ程よくはなく舗装路は全体の約半分であった)中央にグリーンベルトをもった片側二車幅の素晴らしいコンクリート舗装、僕等のラビットスクーターはフルスロットル80キロで突っ走る。と云っても道が広く、大型のバスやトラックは100〜120キロで頻繁に追い抜いて行くから、全然スピード感がない。眠気を催す位だ。だが、バカでかいトレーラーが飛行機のような爆音を立てて通りすぎる時などは、その風圧でスクーターはフラフラする。こういう意味ではスリル満点だ。道は同じようなゆるい起伏をいくつも乗り越えて真直ぐに地平線に続く。一時間おきぐらいに明るいユーカリの林に囲まれた小さな村が現われて、南国の強い日射しに白く輝いた単調な道程に変化を与えている。

 

やがて黒々としたコーヒー園が見え始め、スクーターは有名な東山農場Fazenda Monte D’esteに入って行く。この農場はブラジルを訪れる殆んどの日本人が見学するそうで、見学者のためのコース
が、
ABCDぐらいまであり、見学者の示す関心の程度に応じて、大雑把にも詳しくも見せてくれると聞いていたから、僕等は持てる知識の総てを動員して質問することにした。それが功を奏したのかどうかはわからないが、昼食後に藤原支配人は自らジープを運転して農場を隅から隅まで案内してくれる。農場はブラジルのファゼンダとしてはそれ程大きいものではないそうだが、それでも、車で三時間も走らなければ充分に見学できない。ここは多角経営で、コーヒーをはじめ、ワタ、サトウキビ、アバカシ等を作っている他、農場内に日本酒の醸造工場まである。今出来たと云う温い酒を御馳走になったが、褒めるのに苦労するといった味であった。

夕食は農場にいる二十人ばかりの研修生と共にする。彼らは日本で高校を卒業してきた二十才前の青年達、ここの農場研修所で一年半ポルトガル語と、実地にブラジル農業を学んだ後で、アマゾンや

直線上に配置