キャンパスの自然に目を凝らすと、いつの間にか侵入してきた樹木が、すっかり根をおろしている姿に出会います。すっかり背が高くなり、植栽された樹木を圧迫していることも少なくありません。ほとんどの樹木は日当たりのいい裸地でいち早く発芽し、すばやく伸びる「陽樹」です。日照を確保できれば、どんどん幹を伸ばし、枝を広げます。
陸上競技場の東側の部室脇にハリエンジュが7メートルほどに背丈を伸ばしていました。
ハリエンジュはマメ科の樹木で、根に根粒が形成され、空中窒素の固定能力があるため、荒廃した土地でも旺盛な生長を示します。北米原産の落葉高木で、ニセアカシアとも呼ばれています。街路樹等に利用する目的で導入されたようですが、各地で純群落を形成するまでになり、本来の植生を圧迫する樹木として、その繁殖振りが問題視されるようになりました。キャンパスのハリエンジュも5月にフジほどではないが、房状に垂れ下がった白花の花序を形成しました。なかなか美しい花です。果実はマメ科だけあって、豆果を実らせます。
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陽光を一杯に受けるハリエンジュ |
初夏には花序を垂らし、目立つ |
西キャンパスで一番目にする侵入樹木はシュロでしょう。中国に分布するヤシ科の常緑高木で、幹は太らず、枝分かれせず、樹高だけが高くなります。幹は繊維(いわゆるシュロ毛)によって覆われ、伐採に苦労する樹木です。鋸で切っていっても手応えがなく、一向に切り進めません。秋に果実が数多く黒く熟し、鳥によって散布されます。果実は美味しそうに見えませんが、鳥には果実が人気あるらしく、鳥が落とす糞と共に散布され、思わぬところに生え、勢力を拡張しています。
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幹を伸ばしたシュロ |
秋にはたくさんの果実が稔る |
アオキは薄暗い林の中でも育つミズキ科の常緑の低木です。枝は数年間緑色なのでアオキというそうです。庭木にも斑入りの品種などがよく植栽されています。秋深く熟す果実は比較的大きく目立ち美味しそうです。しかし、鳥にはあまり評判がよくないらしく、翌年の春まで残っています。一度発芽すると少々の日陰でもしぶとく育ちます。濃い緑色の大きめな葉が、わずかな光を逃がさず、光合成をしているようです。東西キャンパスの薄暗い林で、あちこちで育つアオキも私たちにとっては厄介な樹木です。
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暗い林床でも、株を広げるアオキ |
秋深く、赤く熟したアオキの果実 |
樹木ではありませんが番外で草のワルナスビを紹介します。目を凝らせばあちこちの草原(くさはら)で、よく見かけるナス科の草本です。アメリカ合衆国の原産で昭和初期に上陸し、全国に広がった「悪いナスビ」です。花は可憐ですが、茎や葉に鋭いとげが多く、駆除しにくい難敵です。手鎌で刈り取るには革製の手袋などの防御が必要です。しかしどんなに刈っても、来年あちこちで花を咲かせるでしょう。
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ワルナスビ |
佐藤征男(記) |