コラム:「非熟練ドライバー」とパークアンドライド

最終更新日:1999年3月4日


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北陸本線明峰駅。石川県南部の小松市に位置し金沢へは普通列車で30分、一部に新興住宅地も混在する農村地帯に1988(昭和63)年に開業した新しい駅である。当初は駐輪場さえ満足に確保されていない駅だったが、まず駅西側の水田を埋め立てて通勤者向けの月極駐車場が建設され、その後駅東側の水田もJRの手によって一時利用者向けの無料駐車場として整備された。今や通学客以外はこの駅の利用客の大半がパークアンドライド客という状態であるが、駅東側の一時利用者向けの駐車場には軽四や営農用の軽トラックが駐車されているのが目につく。これらの車を運転しているのは、主婦や農家のお年寄りといった「非熟練ドライバー」である。

この付近の農村地帯は大規模な農道の整備が行き届いており、さらに最近は広大な駐車場をもつ郊外型ショッピングセンターが開店し、地域住民は都市部へ車で通勤しない限りはひじょうに運転しやすい道路でしかハンドルを握る必要がない。よって自らハンドルを握って都市部へ出ることの少ない主婦やお年寄りなどは、「非熟練ドライバー」となり、車の多い都市部での運転を敬遠しがちである。よって金沢などへ出かけるのにパークアンドライドを利用するのである。

なぜバスや自転車で駅へ出ないのだ、との意見もあるだろう。しかし明峰駅程度の駅をターミナルとする路線バスなどなく、金沢へ直接出る路線バスもモータリゼーションの進行で全廃された。また極端なクルマ社会の中で運転免許をもつ人が自転車を運転する習慣は失われている。300m離れたタバコ屋へタバコを買いに行くのにいつも車を使う、などという話も決して珍しくない。

結局バスもなく、自転車を使わなければならないようでは主婦やお年寄りは出かけるのをためらってしまう。そこにパークアンドライド駐車場があれば、「駅までならば運転できる」ということで出かけることになるだろう。つまりパークアンドライドが「非熟練ドライバー」に都市部へ出かける機会を与えているということになる。

今後はこの地域でも高齢化が進展するであろう。そのとき明峰駅に駐車場があれば、お年寄りたちは喜んで金沢へ出かけるに違いない。

(西田俊彦)


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