「真夏の夜の夢」組曲

 古典派の伝統を受け継ぐバランスのとれた形式で、ロマン派の詩情を歌い上げた作曲家、メンデルスゾーン。彼の作品には誰もが聴いたことのある著名なものが数多く存在し、生前から今日に至るまで、多くの人々に愛され続けてきた。では、人々が魅了する音楽を数多く生み出した彼は、どのような人物だったのだろう。
 フェーリクス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809-1847)は、北ドイツのハンブルクで誕生した。彼の家は、祖父モーゼスは著名な哲学者、父アーブラハムはドイツ屈指の銀行の創設者、姉ファニーは作曲家という、ユダヤ系ドイツ名門一族であるが、そのような家系で育った彼は、まばゆいばかりの早熟の才を花開かせた。また、作曲ばかりでなく、指揮や教育においても大きな足跡を残したことでも知られている。彼の作風の特徴は、古典派の伝統を受け継ぐバランスのとれた形式でロマン的な情感を表現しているところだろう。また、交響曲第四番《イタリア》や交響曲第三番《スコットランド》のように、旅行先でみた風物から受けた感動や絵画的な情景を音楽的表現にうつしかえることに特に優れていた。
 今回演奏する『夏の夜の夢』は、メンデルスゾーンが17歳という人生の中で最も多感であろうと思われる時期に、シェイクスピアの戯曲を読み、序曲を作曲した。この曲は、古典的なソナタ形式を踏まえており、管楽器による神秘的な序奏に続き跳ね回る妖精、ロバのいななき、ベルガマス舞曲と特徴的な音形が多く書かれており、聴き所が満載である。

序曲が完成した17年後、序曲に感銘を受けたプロシア国王、フリードリヒ・ウィルヘルム4世の勅命によって、付随音楽を後に作曲した。付随音楽は全部で12曲あるが、今回演奏する曲は「スケルツォ」、「夜想曲」、そして誰もが一度は耳にしたことのある名曲「結婚行進曲」である。

『夏の夜の夢』は劇付随音楽であるので、お客様皆様に音楽だけでなく、物語の世界にもご案内することができれば幸いである。







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