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亦樂會



 舊世界から新世界へのめまぐるしい過渡期に最も大切な學生時代を持ち得た事をしみじみ幸bノ 思ふ。時代を追つて學び育つて來たが之から時代を育てゝゆかねばならぬ。
山中鹿之助の月に祈つた氣持
 なつかしき哉六つ歳
 たのしき哉友を憶ふ
 有難き哉 親の慈愛
 いざゆかん七つの海へ
(和田 一雄)

 一橋六年の學園生活は何と云つても温室の生活だつた。之からは嵐も吹かう。雨にも遭はう。途 中で立枯れる事なき樣心の用意が肝心だ。前途の光明を求めて現在の苦しみを樂しまん。
(和田 篤)

 一橋の生活六年間、そこに我々が何を得ようともそして今後どの道で働かうとも、我々の友情が 常に變らぬ如く、常に希望を持つて働いて行かう。
 元氣に朗らかに肩組んで。
(吉田 貞雄)

 國立でよかつたもの。學校の建物。いてふと櫻の竝木通。夕霧。星空。喫茶店「エピキユール」。 芝生。池の睡蓮。谷保の梨畑。
 たゞ、動物園にたいした動物の居なかつたのが氣にかゝる。居たのは死にかゝつた水鳥が二羽。
龍や虎は見當らなかつた。あるひは、隱れ蓑でも着て姿を現はさなかつたのかも知れぬ。とにかく 動物の居ない動物園よ、さやうなら。
  ――國立をとはに愛する。
(横山 健之輔)

 有朋自遠方來不亦樂乎
 共に、徃かむ。
(山崎 坦)

 顧れば幾多の思出が胸中を去來する。そして學園生活は矢張り人生のパラダイスであらうとしみ じみ考へる。而し今「強き人間へ」の道が目の前に開かれた。思へば樂しき門出である。
(森田 善之助)

 一橋六年を最後のピリオツドとして永き吾が十七年の學生々活を此處に終る。變轉の流の中に殘 りしものは温き友情と馬術部に對する限りなき熱情のみ。友の顏、友の顏。そして其處にこそ、自 分の新しき出發點がある。
(三宅 駿一)

 何と言つても凡兒凡兒と呼んで呉れた多くの友と別れる事がつらい。長い樣で短かかつた一橋の 生活、其處で得られたものは永劫に變らぬ親愛の感情だ、我々は卒業しても尚一層この美しい感情 を育てゝゆかねばならない。斯くして一橋はu々榮え、有爲の人間も生まれるのである。友よ健在 なれ。
(三浦 庸三郎)

 永い學生生活も愈々終りになるかと思ふと、感慨無量になる。殊に豫科、學部を通じての一橋生 活六年も之でおしまいかと思ふと、些か淋しいやうな氣もする。併し一方愈々社會の一員として活 動し得るかと思ふと自ら心の引き緊るを覺ゆる次第である。
(松島 英夫)

 正氣浩然。
 至誠天に通ず。
 千萬人と雖も吾れ
 徃かむ矣
(松井 孝夫)

 人の考えは限界迄行くと分らなくなる。凡人と天才と狂人とを考へて見るがいゝ。平凡は非凡で あり平均は特殊である。平凡に滿足出來る人は幸bナある。然し私は百の凡人を作るよりも一人の 天才を得る爲に九十九人の狂人を許容するであらう。
(前田 南)

 六ケ年の學業を修了して、愈々母校を去らんとする。吾々は一方母校との別離を悲しむも亦他方 社會への巣立ちには心躍るのである。
 茲に母校の榮光と同輩諸兄の御健鬪を祈る。
(深山 巖)

 豫科にゐた頃は六年間の學生々活は長すぎるとさえ思つた事もあつたが、學部へ來てからは本當 にまたゝく間に三年間が過ぎて行つた。これもあれもと絶えず計畫をばかり追つてゐたためであら う。いよいよ卒業となればやはり一種の感慨はあるが、何と表現すべきか、自分にもはつきり判ら ないでゐる。
(藤田 信正)

 今考へると餘りにも短い一橋の生活でした。何等なすところなく卒業して行くのは淋しい氣持で す。
明日を目指して今後も大いに艶iし度いと思つてゐます。
(馬場 富一郎)

 負けさうだと思ふ試合は必ず勝ち、勝てさうだと思ふ試合は必らず負ける。この事は勝利と云ふ ものは眞劍に勝つ可く努力した者と勝ち度いと云ふ氣持を持つ者にのみ與へられるものだと云ふ事 を感じさせられる。この簡單な事をしみじみ體驗させられたのが商大六ケ年間の生活だ。
(新坂 建也)

 明日は別れて西東 乾坤いかに荒ぶとも
 廻る潮の未かけて
 正しく強く幸あれと
 かたみに契る胸と胸
 甘美き情の餞に
 求道の友と酌み交し
 涙に白む今宵かな
       ――「離別の悲歌」より――
(韮澤 嘉雄)

     (短 歌)
一、六とせは夢の如くに過ぎさりて今ぞ出で立つ橋の畔りを。
二、去り難き心のまゝに筆とれば想ひはめぐるいとけなき頃。

三、かくまでに我をヘへし人達の貴き深き惠しのばゆ。
四、限りある生命のとはに生きんには己をすつる他にみちなし。
五、巣立つ日の早くもなればたゞならぬみ國のさまのいたくしのばゆ。
六、炎々と若き生命燃やしつゝ祖國守らん動亂の世界。
(仲山 淑夫)

 先ず諸先生方に感謝の意を表します。六年間の商大生活經つて見れば早いもの、卒業するとなれ ば人竝に感慨無量だ、凡ゆる意味に於て我々の時代程社會から問題視された、學生もない樣だし又 いぢめられた(?)學生もない樣だが、此の困難なる世界の過渡期に於て曲りなりにも其の役目を つとめて卒業する事にせめてもの喜びとほこりを感じ度い。
(中村 富士男)

 東京へあの時舞ひこんで來て、東京を、いま離れるべくある私――その間の六年をしかし、あら ゆる意味に於て私は風來坊としてすごさなかつた。それどころか、かなり多くの眼に見え、又は見 えない友人達の世界への旅訪を計らつてくれた母校と、東京とに今しみじみと禮をのべたい。
(張 漢ク)

 如何に生くべきかに就て此の時代程痛切にその難しさが問題とされたことはあるまい。歴史的存 在としての人間がその「あり方」を變えつゝあるのだ。超越的であつてはならない。又時流に飜弄さ れてはならぬ。
 やがて死ぬけしきは見えず蝉の聲
(谷 虎三郎)

             ムトセ
 萬感交々、唯歩みに歩みし六年也。
(高橋 勝)

 常に夢の世界に生き、理念の爲に情熱を捧げて來た大學生活を去るに當つて一抹の哀愁を感ずる のである。
(高部 文男)

 拐~は自由に、分別は正しく。
(高木 勇)

 非常却つて非常時に非ざるに到つて平常非常は一如となる。幸あれと祈りつつ我爲さんと誓ふ。
(大上戸 幸登)

 過去六ケ年の商大生活を顧みて果して自己が期した丈けの收穫を擧げ得たかどうかは怪しいもの であるが、自分の意志に反した事や後悔する樣な思ひ出が無い事は嬉しい。
 緊迫せる時局の故か、數十年來の慣例を破つて我々の卒業期は繰上げになると云ふ。之も一生の 思ひ出となるだらうと思ふ。
(菅谷寛一)

 長い學生生活最後の六ケ年を一橋に過し得た幸b感謝する。中でもゼミナールの生活から體得 した學問と修養とは、血となり肉となつて私の生涯を通じての原動力となるであらう。
 吾々は今多事多難なる社會情勢の只中へと學窓を巣立つてゆく。希くは一大飛躍をなしつつある 我が國の爲に、私の微力が十二分に役立たん事を。
(重松 輝彦)

 無限の感謝
 無限の希望
(齊藤 定雄)

 たらひからたらひへわたるちんぷんかん。
 此度のたらひからも赤裸で飛び出すのだが、祖先から受けついだ借金を返す義務がある。よい子 孫によい財産をのこす義務がある。
(酒井 襄)

 此の日また遺言別事なし
 再會の日正に健在を拉し來つて更に痛飮せんと欲す
  ―――波濤巖頭に飢えて月寒し―――
(佐藤 敏登)

「飮まう」と呼べば「よからう」と答へる。そして浮世の垢をビールの泡と樂しい思出で流しませう。
私は丸の内の街角で社交會の席上で、或は重役會議室で何時でも諸兄からのお聲をまつてます。
(小林 悦生)

 一橋六ケ年、その生活は實に豐かだつた。得たるもの、友また端艇道。
(小池 眞登)

 良き師より學び、良き友と交りし樂しき學園生活只今の處それに對する感謝のみ。
(石川 健一)

 良き師、先輩、親しき友、快き學舍に惠まれた一橋六ケ年の生活はまことに意義深く樂しきもの であつた。私はこの憶ひ出を永久に持ち、一橋人たるの自覺と誇りの下に人生を歩んで行きたい。
( 井上 一造)

 學校生活は私に理論を教えてくれたと言ふより寧ろ落着いた生活の素地を與へ てくれたと思ふ。
(天谷 幸和)

 

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