■現在位置:トップページリレーエッセイ
リレーエッセイINDEX

旧小平分校跡を逍遥して

森口 昭治(経済学部、Tクラス)

1月の寒風吹く朝、『一橋学園』と言う聞き慣れた様で聞き慣れない名前の駅に下車した。
早朝に杉並の家を出て、井の頭線で吉祥寺駅に行き、そこからJR中央線で国分寺駅まで乗り継いだ。いつもの母校空手部の土曜日OB・現役合同練習会だと、当然2つ先の『国立』まで一挙に行くのだが、今日は国分寺駅から更に西武多摩湖線に乗り継ぐことになった。目指すは、『一橋大学国際交流センター』キャンパス内に在る『如水会スポーツクラブ』である。今日は、統一センター試験があり、国立キャンパスの施設へは受験生以外は出入り差し止めで、現役生のクラブ活動も例外ではなく、仕方なく母校空手部のOB・現役合同練習もいつもの国立道場から急遽、小平のスポーツクラブ内の大体育館で行う事になった。 お陰で、私は実に40年振りに旧小平分校跡を訪れる機会に恵まれることになった。

空手練習の集合時間より40分ほど前に着いたので、旧小平分校跡に建てられた交流センターの施設やグランド、更には学生時代の約2年間を過ごした懐かしいはずの学園周辺の町並みを散策する時間を得た。もっとも、その積りで多少早めに家を出ので、散策は予定どおりの行動ではあったのだが?
ところが例の『一橋学園』駅を出て数分歩いて見て最初に思ったのは、『いったいここはどこかな?』と言う印象であった。確か、『一橋大学前駅』と『小平学園駅』との2駅が合体して、『一橋学園駅』となったように記憶している。と言うことで、駅周辺は文字通り初めての見知らない商店街であった。唯一昔と変わらずにあったのが、駅反対側にある『陸上自衛隊の駐屯施設』であった。
それでも暫くは校舎があると思われる西方に向いて、見知らない住宅街を歩いて行った。10分程度行くと、武蔵野の松林に囲まれた旧分校跡が左手に見えてきた。北側の脇門から施設内に入ると、コンクリート作りの交流センターの施設や学生の宿泊施設が林立していた。特に学生の宿泊施設、学生用アパートメントと言った方が相応しいまるでオリンピックの選手村のように立派な比較的新しい集合住宅が幾棟も建ち並んでいた。冬の早朝であり、外国人?学生の姿はほとんど見あたらなかった。共同大食堂で日本人学生が数人で『餅つき祭り』の準備をしていた。
宿舎棟群の裏側を通り過ぎると、前期の体育授業でラクビーなどを練習した懐かしい小平分校のグランドがあり、アメフト?クラブの大勢の男女学生が早朝から元気に練習をしていた。一瞬、前期小平分校時代の体育授業の恩師『川口先生』指導のラクビー等の楽しい思い出が甦って来た。戸田のコースでのボート乗り、大学の地方宿舎があった『妙高高原』でのスキー合宿等大学時代の体育授業は実に変化に富んだ楽しいものだった。

更に、グランドから南脇門を潜ってキャンパスを出て再び校舎周辺の町並みを逍遥してみた。武蔵野の風景の名残か?小川沿いに散策用の遊歩道が記念物的に保存されていた。(この小川が津田塾女子大へつながる『ラバーズ・レイン』と呼ばれていたこともあった?)
以前は蛙が鳴く田園と緑豊かな小平分校周辺の長閑な情景はなく、戸建やマンションが立ち並ぶ東京周辺によくある郊外型の在り来りの住宅街になっていた。それでも閑静な昔ながらの住宅街の面影はあり、日米安全保障条約反対のシュプレヒコールをやりながら、小平分校の周辺をデモした学園祭の記憶が甦ってきた。確か、学園祭のテーマは安保反対、『流れに棹差す』であったように記憶する。お陰で『流れに棹差す』とは、流れに逆らって立ち止まり考えてみると言う風にズーッと誤解していた。典型的なノンポリ学生であった自分が、政治に関心をもったクラスの一部友人の先導で安保条約の反対デモに参加した懐かしい思い出であった。芥川賞作家、柴田翔の『されど我らが日々』が未だ学生の人気小説であった頃であった。

気がつくと、時計は集合時間の直前の9時55分を回っていた。
慌てて如水会スポーツクラブに一番近い交流センター正門に戻ることにした。正門に向う学園前の目抜き通りだけは、昔と変わりない街路樹が続く趣きある並木道であった。     『放送大学』の実習設備も併設されている交流センター正門への文字通り『一橋大学通り』を急ぎ足で戻りながらも、道沿いの昔ながらの風格ある民家の大きな庭に咲く早咲きの紅白の梅が、真冬の陽光に照らされながら見事に花をつけていた。
ふと、住んでいた下宿家の叔母さんや娘さんや同宿の若い仲間達の笑い声が、酷寒の中にも早目の東風(こち)に乗って聞こえて来た様な錯覚を覚えた。

そこでいつもの様に一句:

振り向けば 梅の香匂う 過ぎし街  <小喜楽>

この後、如水会スポーツクラブの大体育館での現役生達との空手の寒稽古に参加して、充実した真冬の一時を過ごしました。
それにしても、フィットネスや温水プールを備えたスポーツクラブの施設の充実振りには驚かされました。

2008年1月19日(土)

 以上
 
 
© 2008 S43
如水会昭和43年会 一橋大学ホームページ 如水会ホームページ