本稿は、1997年6月29日に行われた府中刑務所見学についてまとめたものである。以下の文章は法学部3年(当時)緑大輔が作成したものである。なお、もともとワープロ文書であったので、MS-DOS変換に失敗した図表などは省略し、一部修正を施してある。
(1)刑務所に入るまで
(略)・・・北府中駅を降りると、そこは刑務所の角である。まずはその高い塀に驚かされた。・・・強い陽射しの中、汗だくになりつつ歩くこと30分、ようやく入り口についた。実は遠回りしていたわけで、4分の3周して入口にたどり着いたのである。裏返せば、それだけ広いということになる。・・・
刑務所入口前では刑務官の方が出迎えてくださった。男女別に二列に並べさせられ、見学者人数を3回ほど入念に数えていた。「48人です!」と無線で伝えられ、刑務官の方々の敬礼を受けつつ、中に入ったのだった。
(2)府中刑務所の中へ
門をくぐると、人々は例外なく庁舎に入る。庁舎は白塗りで、古い木造の重厚な建物である。中は薄暗い。私たちは、まず3階の大きな部屋(おそらく見学者への説明用の部屋なのであろう、椅子・机がきれいにならんでいる)に通された。3階へ登る階段には、「職員以外は立ち入らないで下さい」という札が掛かっており、そこでは冷房が強すぎるくらいに効いていた。天井が高いのが印象的である。
ここで、刑務官の方から府中刑務所についての大まかな説明を聞く。刑務官の方は帽子を取り、分厚いファイルをみながら説明を始められた。
府中刑務所は、1790年に設置された石川島人足寄場にルーツを持ち、その後巣鴨刑務所を経て現在の府中へは1935年に移転した。
定員は2598名(日本最大)で、1997年 6月24日現在で2297名が収容されている。平均的な刑務所では収容人員は 600〜 700名なので、府中刑務所の大きさが分かるであろう。職員数は 530名強で、刑務官と受刑者の比率は約1:50。刑務官の話によれば、刑務官が所持している武器は警棒のみなので、この比率は時として受刑者の統制に影響が出ることがあり、神経を使うとのこと。8人の受刑者で喧嘩を始められ、止められずに仲間の応援を求める、ということもあったそうである。もっとも、日本の刑務所は外国の刑務所に比べて、受刑者の喧嘩や暴動は少なく、統制がとれているらしい。刑務官の人は国民性にその答えを求めていたが、その他にも理由はあろう。
B級受刑者は暴力団関係者・覚醒剤事犯者・アルコール依存者など更生意欲が乏しく、処遇が困難である者が多い(例えば、対立抗争中の暴力団関係者を一緒に扱うと混乱の原因に)という問題があるという。
また、近年はF級受刑者の数が急増しており、ここ10年間で3倍の 700名に達している。うち、府中刑務所では1997年 6月24日現在で 432名の外国人受刑者を収容している。ことにイランを中心とした中近東地域出身の受刑者人数の伸びが著しいということである。そのため、通訳・翻訳のために国際対策室を設置するなど、対応が急がれているらしい。
受刑者の動作時限は…
起 床 6:45
洗面・点検 6:45〜7:05
朝 食 7:05〜7:35
出 房 7:35〜8:00
作業開始 8:00
休 息 9:45〜10:00
昼 食 12:00〜12:40
休 息 14:30〜14:45
作業終了 16:40
還 房 16:40〜16:55
閉房点検 16:55〜17:00
夕 食 17:00〜17:30
仮就寝 18:00
就 寝 21:00 『施設のしおり』府中刑務所刊より
この他、累進処遇や作業などの説明を受けた。
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