<公設弁護人事務所訪問記>

 1999年12月、後藤ゼミでアメリカ研修が行なわれた際に、カリフォルニア州サクラメントの公設弁護人事務所(Public Defender Office)を見学しました。以下はそのときの記録です。

●公設弁護人事務所とは

 刑事事件の被疑者または被告人が、貧困ゆえに自ら弁護人を雇えない場合に、公費によって選任される弁護人を「公設弁護人」と呼び、訪問したのはその公設弁護人たちの事務所である。公設弁護人制度の詳細については、岡田悦典「被疑者弁護に関する一試論」福島大学行政社会論集11巻1号〜12巻3号(1998〜1999年)参照。

●見学の様子

 サクラメント公設弁護人事務所は、サクラメントの行政センターAdministrative Centerの内部にある。依頼人の待合室や資料室(ほとんどが判例集)のほかに、各職員のデスク、会議室、拘置所内の被疑者とパソコン画面を通じて接見するシステムなどが備えられていた。このパソコンを通じた接見により、遠距離の刑務所まで弁護人が出向く必要がなくなったというが、被疑者が満足できるかどうかは微妙な印象を受けた。
 また、廊下を隔てて事務所の部屋があるばあいは、電子ロックで廊下に面する扉が完全にロックされていた。

●質疑応答

 質疑応答は会議室で行なわれた。会議室は判例集の本棚がびっしりと並べられ、真中に大テーブルとホワイトボードが置かれていた。質疑応答の内容は以下の通り。質問者は後藤先生及びゼミ生、回答者は事務所長。

Q:事務所には弁護人が何人いるのか。
A:83人の弁護人が所属しているが、そのうち10名は少年部に属しており、ここにはいない。別の場所にある事務所にいる。

Q:給料はどこから出るのか。
A:郡Countyから支給される。この点は検察官や裁判官と同様。給与体系も検察官とほぼ同じである。顧客の85%〜90%は低所得・教育低水準ゆえに弁護料を支払うことが出来ない。そこで郡が我々を雇用するという形で給与が支払われている。

Q:年間でどれくらいの件数をこの事務所では扱っているのか。
A:大体6000件くらいだろう。常時10件から15件は三振法Three-Strike事件を扱っている。三振法は恐ろしい法律だと思う。厳罰化は問題がある。安全を求めるあまりに、ナイフを持つだけで刑務所に送られるのは酷だ。

Q:毎年どれくらいの新任弁護人が雇われるのか。
A:年に6人の新人を雇う。でも、毎年6人がこの事務所をやめるので、事務所の職員数が大きく変わることはない。今、3人の募集枠に対して200人が申し込んでいる。陪審公判を経験しておきたいという人が多いのだろう。

Q:現在の公設弁護人制度において改善すべき点は何か。
A:(後藤先生から「お金かい?」と言われて)お金も必要。事務経費のためのお金は必要だろう。また、警察から送られてくる調書などの記録が、過度に守られており情報が我々のところに届かないところが問題。開示する必要がある。
また、罪を犯していない人が答弁取引に応じるなどの問題もあり、警察を監視するシステムを構築する必要がある。警察の腐敗の防止・建て直しも公設弁護人の仕事といえるだろう。

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