カッコウ (ホトトギス目ホトトギス科) 全長35cm 夏鳥
昨年5月末のある雨の朝。低く雲が垂れ込め、バードウォッチングには悪条件の暗い日で、鳥の数も少なく、そろそろ引き上げようかと思っていたときでした。陸上競技場の南側から、「カッコー、カッコー」とさわやかな声が聞こえてきました。慌てて姿を探しましたが、見当たらず。ワーズワースが「おお、郭公、われ汝を鳥とや呼ばん、或いはたださ迷える声とや呼ばん」と詠った情景そのもののようでした。
私にとってカッコウと一橋大学には深い縁があります。大学受験で某大学を落ち続け2年浪人した末、前期試験でまたもや不合格。残る後期試験は一橋大学に出願していましたが、すっかりやる気を失い、「もう私大に行く。」とあきらめ、受けるのをやめようかとすら考えていました。後期試験前日、それまでまったく見ようともしなかった一橋大学の大学案内を気紛れにめくっていたときのこと。「キャンパスにはウグイスやカッコウの声が……」それを読んだ途端、「明日受ける!後期試験、がんばってみる!」と叫んだのでした。それから4年して、ようやくこの大学でカッコウの声を聞くことができ、感慨もひとしおといった思いでした。今、この大学にいるのもカッコウのおかげと言えるかもしれません。
遠野物語では、カッコウはホトトギスの姉だとされています。体色ではほとんど区別のつかないこの2種ですが、カッコウの体長は35センチ、ホトトギスは27センチで、カッコウのほうが一回り大きな体をしています。そのためお姉さんとされたのかもしれません。しかし野外では、この2種の大きさを比較する機会に恵まれることはなく、体長は区別の決め手のならないことがほとんどです。経験を積んだバードウォッチャーでも、カッコウの仲間は鳴かなければ区別ができない、区別に自信が持てない、という人は結構多いようです。カッコウは、声を楽しむのが古今東西の慣わしだと言えるでしょうか。
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