センダイムシクイ (スズメ目ヒタキ科) 全長12.5cm 夏鳥
「センダイムシクイ」とは聞きなれない名前かもしれません。漢字では「仙台虫喰」と書きます。「仙台」といっても別に仙台に多いわけではなく、この鳥の鳴き声が、伊達藩のお家騒動を基にした歌舞伎『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の登場人物「鶴千代君(つるちよぎみ)」と聞こえたことから名付けられたと言われています。この鳥の鳴き声を「鶴千代君」と聞きなすか、「焼酎一杯グイーッ」と聞きなすか、好みが分かれそうなところですが、残念ながら私には「チヨチヨチヨ、ビー」としか聞こえません。
「ムシクイ」と名のつく鳥は、メボソムシクイやエゾムシクイ・イイジマムシクイなどがいます。どれも体色が緑色がかった褐色をしており、大きさもほぼ同じで、非常によく似ていて識別するのは大変困難です。見分けるポイントを図示した図鑑のイラストを見比べても、「どれもあまり違わないなあ」というのが正直な感想です。野外の暗い森の中ではなおさら見分けにくく、ベテランバードウォッチャーの間でも「あれはセンダイムシクイだ」「いや、あの黄色味のある腹はメボソムシクイだ」と議論になることもしばしばです。そんなムシクイ類ですが、さえずりはそれぞれ特徴的で、一声さえずってくれれば簡単に種類が判明します。
一橋大学のキャンパスでは春と秋の渡りの際のみ姿を見せる鳥で、職員集会所付近で観察したことがあります。この鳥を見るお勧めの時期は、何といっても春です。繁殖期にあたるこの時期には頻繁にさえずるので、特徴ある美声を堪能できますし、何より、「これは何ムシクイだろう?」と頭を悩ませる必要が無いからです。
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