はじめに

この文書に関する一切の権利は一橋大学鉄道研究会が保有します。 無断複製・転載を禁じます。


今年の研究テーマは「モーダルシフト」です。 戦後一貫して伸び続けてきた自動車輸送とそれを主体とした物流形態は、 都市部における渋滞問題の他にも長期的・大局的な観点においては資源の逼迫や大気汚染等の環境問題を引き起こしました。 そのため現在これらの問題を抜本的に解決することが重要になっています。

読者の皆様にとってモーダルシフトは聞き慣れない言葉であると思います。 モーダルシフトとは現在物流において自動車を使うという 「モード(輸送形態)を鉄道や海運といった他の輸送形態に「シフト」する(転換する)ことです。 物流に携わる自動車の台数を直接減らすことで自動車輸送の弊害を軽減し、先の問題を解決するというのがモーダルシフトの目的です。

ただ、モーダルシフトは現在に提案されたものではありません。 発想自体は既に二十年以上前から存在し、その時以来政策面においては何回か取り上げられています。 しかし時代の流れが速く、状況がめまぐるしく変化する中でモーダルシフトが一貫した政策となることはなく、 毎回様々な背景を伴って登場しては忘れ去られるということを繰り返してきました。

従って今回再度モーダルシフトが話題になりつつあった時、今回の流れが本物であるか見極める必要がある、 というのが研究テーマに選んだ動機です。 その為に多くの視点からモーダルシフトを取り巻く現状を分析し、モーダルシフトが今後発展するか否かを考えてきました。

第1部ではモーダルシフト自体について説明しています。 モーダルシフトそのものの知名度が決して高くない為、第1章ではモーダルシフトに対する平易で一般的な説明を行っています。 第2章では実例を取り上げ、モーダルシフトについての仕組みを解説しています。

第2部ではモーダルシフトが持つ可能性、すなわち利点を取り上げました。 これらの利点は全て時代背景に関連しています。 従ってモーダルシフトの気運が高まる背景を中心に考察しました。 第1章では渋滞問題、第2章では環境問題、そして第3章では資源や労働力との関係から現在の自動車輸送の持つ問題を取り上げています。

第3部では逆にモーダルシフトの限界、つまり欠点について述べています。 モーダルシフトが長期的趨勢とならなかった原因は何処にあり、今後解決の方向性はあるのかということについて、 第1章は費用・時間における問題、第2章では現代物流の一大特性である小口化との関係を中心に考察します。

第4部ではモーダルシフトについての行政の見方や考え方をまとめています。 モーダルシフト推進の先頭に立っている行政はモーダルシフトを取り巻く現状についてどの様に認識し、 これからについて何らかの戦略を持っているのかを捉えることで今後のモーダルシフトの流れを探ります。

以上簡単に今回の研究を振り返ってみましたが、詳細は本文に目を通して頂きたいと思います。 なお、この研究では航空輸送については取り上げませんでした。 航空輸送は輸送時間が極端に短い一方輸送費が高いという特性を持ち、 結果として輸送品目も特殊なものが多く他の輸送機関による代替輸送の可能性は現時点では乏しいことに加え、 輸送量実績も他に比べ非常に小さい為今回は誠に勝手ながら考察の対象から外させて頂きます。 何卒宜しく御願い致します。

読者の皆様がこの冊子を通じてモーダルシフトへの理解や認識を深めて頂けることができれば非常に幸いです。

この研究誌はご覧の通り簡易製本(手作り)となっておりますが、これは一人でも多くの方に当鉄道研究会の研究活動、 および取り上げる研究対象に関心を持って頂けるよう、研究誌の無料配布を続けているためです。 約半年間の研究の総決算としてまとめ、印刷・製本と部員が総掛かりであたってきました。 ぜひ御一読のうえ、ご意見・ご感想を当鉄道研究会までお寄せください。

2001年11月3日 一橋大学鉄道研究会 部長 植松和毅


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Last modified: 2001.12.17

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