一橋大学グルーフの研究成果が国際的にも高水準にあると言う評価を受けている理由に、今年で創設10周年を迎える『一橋大学イノベーション研究センター』(略称:『イノ研』)の存在とその小所帯ながらも活発で社会に開かれた実践的な研究活動があります。
この4日(日)、5日(月)の両日に亘り、神田一橋如水会館に隣接する学術総合センター2階にある『一橋記念講堂』で行われた掲題シンポジウム『イノベーション研究のフロンテアから』(日経新聞共催、如水会協力)に参加した印象を、日頃お世話になっている各位ご参考までに報告申し上げる。
- 1.主な講演・パネル内容
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- (1)主な来賓、挨拶者等:
- 尾身財務大臣(一橋OB)、北城挌太郎同友会理事・日本IBM会長、阿部博之東北大名誉教授・内閣知的戦略本部員、杉山武彦一橋大学学長、吹野博志如水会前常務理事等。
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(2)基調講演:
- サービスイノベーションの重要性;マイケル.A,クスマノ米MTI教授
- イノベーション戦略の今後(垂直統合かライセンスか?):A.ガンバルデッソ伊ボローニヤ大学教授
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(3)『イノ研』からの研究発表者:( ) 内はイノ研での職位
- 中馬弘之(教授);DRAMビジネス衰退の現代的意義
- 青島矢一(助教授);デジカメ産業の技術進歩と競争
- 武石彰(教授);大企業のイノベーション『大河内賞』の成果、顛末
- 米倉誠一郎(教授);日本のベンチャー精神『アントレプレナーシップ』を科学する。
- 長岡貞男(センター長):イノベーションにおける競争と協調
- 伊地知寛博(助教授):産学連携と知的財産制度
- 西口敏宏(教授);成功する組織ネットワーク
- J.L.ファンク(教授)非連続技術と水平分業(北米IT産業のケース)
- (4)パネルデスカッション:()内は主な民間企業からの参加パネラー氏名
- 日本企業の強みと弱み、イノベーションプロセスの視点から・・・(3)−1、2
半導体での失敗とデジカメでの成功と言う2つの製品の過去体験から日本企業に於けるイノベーションの特徴、研究課題等を探る論議。 (石内秀美東芝セミコンダクター開発センター長附、小西正弘富士フィルムR&D統括部次長)
- イノベーションの担い手・・・(3)−3、4
大企業(大河内賞)、ベンチャー(起業家)と言う2領域で派生した日本企業のイノベーションの成果、特徴、国際比較、研究課題を論議。 (藤原洋インターネット総合研究所、飯塚哲哉ザインエレクトニクス)
- プロ・イノベーションの知的財産制度・・・(3)−5、6
イノベーションを支え、促進させる経済制度としての知的財産制度の機能、成果、イノベーション発揚の為の今後の研究課題を論議。 (加藤恒三菱電機知財渉外部次長、森岡一味の素知財センター次長)
- ネットワークとイノベーション・・・(3)−7、8
- 2.印象に残ったテーマ
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- (1)クスマノ教授のサービス(ソフトウエア)のイノベーション論
- ITのソフトに代表されるサービス(残余部分)のイノベーションが、クローズアップされる。
従来の残余部分が、勝敗を決する主力、中心になりつつある。サービスは労働集約形であり、『範囲の経済』が支配。
(2)イノベーションに於ける大企業とベンチャーの対比
- 武石教授の大企業研究と米倉教授のベンチャー(中小)のイノベーションの実現現領域、個性、効果等の対比研究は興味深い。
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(3)イノベーションと知的財産制度
- 知的財産制度に拠って表現され、防御され、具体化するイノベーションの成果、限界、範囲等々・・・。
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