刑事訴訟法を改正する法律案に關する提案説明
――第二回國会における檢務長官の説明要旨――


 刑事訴訟法を改正する法律案の提案の趣旨及び改正の最も重要な点四点については、法務総裁から説明がありましたので、私からは、本案の全編にわたり、改正の要点を條文の順序に從つて説明致します。


裁判所の規則制定權との關係

 本案の内容に入る前に、本案の立案にあたつて、憲法第七十七條に基く裁判所の規則制定権との関係を如何に考えたかという点を説明する。
 憲法第七十七條によれば、最高裁判所及びその委任を受けた下級裁判所は、訴訟に関する[#「る」は原文では「を」。13-9]手続について規則を制定する権限を與えられているのであるが、一方憲法第三十一條は、「何人も法律の定める手続によらなければその生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。そこでこの両者の関係について種々の見解があるのであるが、政府においては、国民の基本的人権に直接関係のある事項及び刑事訴訟の基本的構造に関する事項は、憲法第三十一條によつて、当然法律によるべきものとし、この方針に基き本法案を立案したのである。然しながら他面憲法第七十七條が裁判所に規則制定権を與えている趣旨を考慮し、現行法中單純な手続的規定は、これを規則に讓り、本案はこれを削除しているのである。
 次に、全編にわたり、順次改正の要点を説明する。

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