|
写真 佐藤征男 |
サザンカとツバキの種間交雑種。サザンカより遅く、ツバキより早く咲くから、色彩の乏しいキャンパスこの季節にあって貴重な彩である。カンツバキはツバキと名がつくが、どちらかというとサザンカ系である。それが証拠には花びらがパラパラと落ちる。
サザンカは11月から12月に咲く。分布域は九州から山口県あたりで、この頃まだ虫がいるから花粉を運んでもらえる。だから虫媒花。関東で見るサザンカは人の手によって植えられたものである。ツバキは2月〜3月に咲く。九州から本州まで多雪地帯を除いて自生する。だから花粉を運んでくれる虫はあまりいない。そこで鳥に目立つ真っ赤な花を咲かせて、蜜で誘い、花粉を鳥に運ばす戦略を選んだ。つまりツバキは鳥媒花なのである。鳥が留まれるように花びらは厚く丈夫で基部は互いにしっかり接着している。落ちるときは雌しべを残して一緒にバサッと落ちる。カンツバキは花びらが個別にパラパラ落ちるからサザンカ系なのである。
季節が一番厳しいときに咲き続けるカンツバキ。時に降雪の紗がかかり、淡い赤がなんともいえない風情を醸す。冬のキャンパスの功労者だ。
佐藤征男(記)
|