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哲学サークルの入口に咲くアジサイ |
写真 坪谷英樹 |
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額縁の装飾花に囲まれた両性花。 |
写真 佐藤征男 |
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ひょうたん池から西へ、小径を散策する。ガクアジサイが迎えてくれる。大きな一つの花のように見える花は、花の集まりである。装飾花が花の集まりの外側に一列に並んでいる。その様を額縁に例えて名は「額紫陽花」。額縁に囲まれた小さな花のあつまりは性的には完全な両性花。よく見ると一つ一つの小さな花には雌しべも雄しべがある。実を結ぶことがない装飾花は宣伝に徹して虫を引き寄せ、両性花が実を結ぶのを助けている。
ガクアジサイはもともと本州暖帯の海岸沿いに自生する。海岸に適応するための潮風対策で葉は光沢があり大きい。街でよく見かけるアジサイは、ガクアジサイを改良してつくられた日本生まれの園芸植物。花はすべて装飾花になっているので、実を結ぶことはない。江戸時代の長崎に滞在したシーボルトはこの花の風情を愛し、学名(当時)にオタクサ(お滝さん)と日本人妻(Hydrangea macrophylla f.otaksa)の名をつけた。
曇りの空でも雨の日でも、ガクアジサイの花色は鮮やかで、しかもしっとりしている。気分が和らいでくる。思いを巡らしながら、歩を進める。その先には「哲学サークル」がある。50年程前、本校で哲学の教鞭を執っていた太田可夫先生が官舎と大学を通う折り、立ち止まり思索に耽ったという。
佐藤征男(記)
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