福嶋司(植樹会顧問)先生の『森の不思議 森のしくみ』を読んで
都会にいると森は遠い。月1回、国立のキャンバスで植生管理の作業に汗を流せば、森が近づいたような気もするが。作業の指導をしていただいている植樹会顧問の福嶋司先生がこのたび市民向けに森の本を出された。内容は8年間市民向けに主催してきた野外観察会の講座をベースにしている。だからわかりやすい。森と親しくなれる待望の書だ。本書によると、一つひとつの植物名を知らなくとも、森に関心と好奇心をもてば森は身近になるという。
日本に生息する植物種は多様で、温度や水分それに土壌など環境に対する要求もさまざまである。光を浴びないと成長できない植物や、ある程度なら日陰に耐えて成長できる植物もいる。こうした個性豊かな植物が、環境条件への要求が同じなら、同じ環境に集まって一定の集まりをつくる。この集団が「植物群落」だ。互いに階層をつくりながら競争し共存し、例えば森という空間を構成している。森を植物の社会である群落として動的にとらえていくと、森のしくみが理解できていく。「しくみ」を観察することにより、森と仲良くなれる。
本書では一橋大学の「大学キャンパスの参加型・緑化計画」が取り上げられている。改めて国立市の航空写真を見る。我がキャンパスだけは緑に覆われている。これは「緑の島」だ。野生の動植物の隠れ家になって、先の森へとつながる中継点、都会と森を結ぶ回廊の役割も担っているのかもしれない。キャンパスには誇るべき植物群落があるのである。しかし放っておけば、日当たりのいいところでは、クズやヤブカラシなどがマントのように木々を覆う。外来のオオブタクサなどが跋扈する。暗い林の中ではアオキやシュロが我が物顔に蔓延る。キャンパスはもともとどういう環境にあるのか調べる。武蔵野の雑木林の面影も残っている。特徴的な植物の分布に目をやる。競争と共存の視点で観察してみる。群落が身近に思えてくる。ここで改めて『森の不思議 森のしくみ』を繙けば、人が、私たちがキャンパスの森にどのように関わったらいいか見えてくる。森は近い。 |