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イギリスの自然が教えてくれた事

大宅 俊江(平13商)

約4年間、植樹会の事務局をお手伝いさせて頂いたご縁で、今回ロンドンから筆を取らせて頂きます。

夫の仕事に付いてロンドンに越してきて、半年。初めての異国での生活は想像以上に苦難の連続でした。30数年ぶりの厳しさと言われた今年の冬が終わった3月に到着し、ロンドンらしからぬ晴やかな毎日が、新しい出発を応援してくれていると思ったのはつかの間でした。

 今年は特にロンドンの南西地区での不動産マーケットが停滞しているらしく、まさにそのエリアでの家探しをした我々は2ヶ月間家が見つからず、途方にくれていました。水漏れや窓の隙間風、家の中の穴など、古い家で発生する多くの問題を聞いていましたから、遂に見つけた新築物件に入居するも、これまた水漏れやボイラー等ロンドンで定番の問題が数多く発生しました。

 住居が決まらないと手続きは何もできず、電話もインターネットもテレビもない、そして医療制度にも登録できない日々が続きました。東京でのスムーズな生活にすっかり慣れきっていた私には、物件の下見の予約をした不動産屋が鍵を忘れたという理由で何度もキャンセルしてきたり、洗濯機が壊れても修理工がいつまでたってもやって来なかったりする日々に、呆れかえっていました。

 しかしこれは私達だけに起きた悲劇ではなく、日常茶飯事の問題だと気づきました。パーティーでは家でまたどんな悲劇が起きたのかを、大笑いしながら話し合います。「うちは天井に穴が開きバケツで雨をしのいでいたけど、やっと修理してもらえた。修理を頼んだのは1年前だけどね。。。」「それなら、うちだって!お湯が出ないという問題は良く聞くけどうちはお湯だけで水はでないよ!」というように。一つ問題が解決しホッとしていると、またすぐに次の問題がやってくる。パーティーでの話のネタは尽きない。

そして、10数年ぶりの素晴らしい夏もやってきました。

 休みが取れると他のヨーロッパの国へ逃げ出した我々も、たまには・・・とイギリスの田舎町へ出かけました。そこはCotswoldsと呼ばれる田園地帯で、ロンドンの中心から車で2時間ぐらい西に向かったエリア。13〜14世紀にかけて羊毛業のマーケットとして栄え、野原がいくつもの緩やかな丘のように続いています。日本人旅行者に大人気で、Cotswolds専門の日本語の本も多数出版されています。

 大学で有名なオックスフォードあたりからCotswoldsは始まります。我が家のあるWimbledonから高速道路に乗って、1時間程走ると見渡す限りの野原が出現します。今回は小さな可愛らしいアンティークショップが連なるBurford、すっかり観光地化してしまったBourton-on -the-water、こじんまりした素敵なホテルが連なるChippingCampdenに立ち寄りました。それぞれの村に立ち寄ると、小さな花で飾られた蜂蜜色の家並みが暖かく迎えてくれます。Cotswoldsの家々はLimestoneと呼ばれる石灰岩でできている為、独特の蜂蜜色をしているそうです。中庭のカフェでクリーム・ティー(クロテッドクリームとジャムが添えられたスコーンとティーのセット)を頂けば、ロンドンの喧騒をすっかり忘れてリラックスできます。緑の丘では羊たちがのんびり草を食み、川ではカモの親子が列をなして仲良く泳いでいる。たくさんの木々に囲まれゆっくりした時間の流れを体で感じると、心が洗われエネルギーが沸いてきます。こうして、またロンドンの喧騒に戻っていくのです。

 ロンドンにはたくさんの公園があります。Hyde Park、Regent Parkはあまりにも有名ですが、どんな街でも道を一本入ればすぐに公園を見つかります。可愛らしい花々で飾られた公園もあれば、ワイルドな自然と牛や鹿がいる公園もあります。公園にはいつ行っても老若男女がそれぞれの時間を過ごしています。グループでピクニック、一人で読書、トレーニング、子供連れ、いつものおしゃべり仲間。

 

自然との付き合いが上手なロンドンっ子は、自然からたくさんのエネルギーをもらっているのでしょう。彼らを見習って、些細な問題!?には目くじらを立てずに、自然と対話するのがよさそうです。

街角から(1) 街角から(2) 橋のある風景
以上

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