イギリスのクリスマス
大宅俊江(平13商)
約4年間、植樹会の事務局を勤めさせて頂いたご縁で、再びイギリスから筆をとらせて頂きます。今年も日本は猛暑が続いたそうですが、イギリスの夏も異例の暖かさでした。昨年ですと、8月のオリンピックが始まる前まではほとんど毎日雨が続き、オリンピック中には晴れの日もありましたが、気温はあまり上がりませんでした。今年は打って変わって、30度を超える暖かい日が続き、10月に入っても例年程は気温が下がらず過ごしやすい日が続きました。10月の終わりからは気温がグンと下がり、12月上旬の現在、気温は0度〜10度ぐらいです。
一年を通して雨の日が多いイギリスですが、10月末で夏時間が終わり11月に入ると日出は7時頃、日没は午後4時すぎとなり日照時間が短く、暗く雨の多い時期が2月頃まで続きます。11月に入ると気持ちが落ち込む人が多くなりますが(SAD: Seasonal Affective Disorderと呼ぶ)、この季節を何とか乗り切る為かのように、街ではクリスマスの準備が進められていきます。
クリスマスはイギリス人にとって、年に一度の家族が揃う大切な日です。最近の東京程の豪華さはないかもしれません。むしろクリスマスは家族で静粛に過ごすと言った印象で、その点では日本のお正月のようです。12月25日には交通機関がストップし、街から人が消えます。 12月25日のお昼を家族全員でお祝いするのが、イギリスの伝統です。遠く離れて暮らしている家族もクリスマス前に、一つの家に集まります。食事は、伝統的なロースト料理が中心です。典型的なメニューは、七面鳥のロースト、クランベリーソース、パースニップ(白い色をした人参)、ブラッセルスプラウト(芽キャベツ)、じゃがいも等野菜のロースト、デザートにはクリスマスプティング、クリスマスケーキ(たくさんのドライフルーツと共に長期間ブランデーに浸けこんだケーキ)、ミンスパイ(ドライフルーツをクッキー生地につめて焼いた)です。準備は大変ですが、一度オーブンに入れてしまえば食事中に何度も席をたつ事なく、皆が会話や食事を楽しむ事ができるメニューです。
クリスマスの装飾は、ドアにクリスマスリースを飾り、部屋の中にクリスマスツリーを飾るのが一般的です。家の外側をライトアップをしたりする家庭もありますが、政治的な問題になる程電気代が高騰しているので、今年はライトアップを諦める家庭も多いかもしれません。クリスマスツリーはプラスティックの木を使う家庭もありますが、生のクリスマスツリーが伝統的です。11月末頃からモミの木がガーデンセンター等で販売されます。ツリーはクリスマスから12日目の1月5日頃まで飾られ、リサイクリングセンターやガーデニングセンターへ各自が運び、リサイクル資材となります。
実はこのようなイギリスのクリスマスの伝統は、1840年に遡るだけで起源はドイツにあると言われています。1840年代から1850年代にビクトリア女王と夫のアルバート公が新しいクリスマスのお祝いの仕方を定着させました。ビクトリア女王の母がドイツ出身だった事もあり、宮殿には以前からクリスマスツリーが飾られていたようですが、国民にとってクリスマスツリーの考えは全く新しいもので、以前は木の小枝等を飾っていたにすぎませんでした。アルバート公はクリスマスツリーをウィンザー城近くの学校や軍隊の宿舎に寄付し、その後イギリス国内で急速に広まっていきました。人々はろうそく、キャンデー、果物、お手製のオーナメントそして、小さなプレゼント等でクリスマスツリーを飾り付けていたそうです。
我が家もイギリスに越してから毎年、生のクリスマスツリーを飾って楽しんでいます。イギリスの老舗デパートリバティーで美しいオーナメントを揃えました。今年はもうすぐ3歳になる息子がクリスマスを心待ちにしているので、クリスマスツリー選びからオーナメントの装飾まで手伝わせました。たちまちモミの香りが部屋中に漂い、清々しい気持ちになりました。
今年もクリスマスを通してイギリスの伝統を理解し実践する事で、イギリス社会へのより深い理解に繋がる事ができればと願います。
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写真1:Fortnum&Masonのクリスマス装飾
写真2:伝統的なロースト料理(七面鳥と野菜のロースト)
写真3:クリスマスケーキ(中からドライフルーツがどっさりでてきます。)
写真4:ミンスパイ
参考文献:Quenn Victoria popularised our Christmas traditions
By Emma Midgley
BBC Berkshire Reporter
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