イカル(スズメ目アトリ科) 全長23p 留鳥
バードウォチングなんてしたことないけれど、この鳥を知っているという方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。ちょっと不恰好でいながらも愛嬌のある丸っこい体、帽子をかぶったように黒い頭、太くがっしりした黄色い嘴。そうです、何故かJRのキヨスクのシャッターに描かれているあの鳥です。(もっともJR東日本だけかもしれませんが。)決して一般に知られている鳥ではないので、以前から「何故イカルなのだろう?」と不思議に思っています。
イカルは北海道・本州・九州の低地から山地で繁殖し、秋冬には温暖地へ移動する、いわゆる漂鳥です。口笛のようなよく通るやわらかい声で「キーコキー、キヨコキー」と四季を通じてさえずります。心和む伸びやかなさえずりです。中勘助『鳥の物語』(岩波文庫)の中の『いかるの話』では、いかる自らが「ひつきほし」の聞きなしと聖徳太子についてのエピソードを語っています。中勘助は大変鳥に造詣の深いひとだったようで、この『いかるの話』には他にも目白やつぐみなどが登場し、バードウォッチャーが楽しめるお話です。なお、奈良の斑鳩の里はイカルが多くいたことから名づけられたようですが、当時「斑鳩」とされた鳥がこのイカルかどうかはわからないそうです。
一橋大学では冬場にこの鳥の声を聞くことができます。どうやら東キャンパスの池の付近に来ているようで、去年・一昨年、東1号館での授業中に「これ食べてもいい?」と聞こえるさえずりを耳にしました。授業を放り出したくなるのをぐっとこらえ、終わってから一目姿を見ようと探したのですが、結局見つからず幻の鳥のままです。今年こそは、あの愛らしい鳥に出会いたいものです。
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