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キビタキ (スズメ目ヒタキ科) 全長13.5cm 夏鳥

遠出をしないバードウォッチャーにとって、4月末から5月、9月末から10月は、絶好のバードウォッチングの機会です。この時期、山や高原で繁殖する夏鳥たちが平野部を通過するからです。都市部でも、ちょっとした緑地などで、羽を休めたり食料調達をする渡り鳥たちを、ごく短い期間だけ見ることができます。

一橋大学の国立キャンパスでも、この時期には多くの渡り鳥が姿を見せてくれます。キビタキを学内で初めて見たのは、2年前の9月でした。ひょうたん池で、見慣れない褐色の鳥が水浴びをしていました。キビタキは、雄は黒に黄色の美しい体色ですが、雌や若鳥は全身が褐色をしていて識別が非常に困難です。このときは、体色がオリーブ色がかっているので、おそらくキビタキだろうと判断しましたが、実のところ、あまり自信はありませんでした。しかし今年5月、念願の雄のキビタキを情報教育棟の側で観察することができました。玉をころがすような声に頭上を見上げると、目の覚めるほど美しい黄色い鳥がいたのです。

キビタキは、英語ではNarcissus Flycatcherといいます。Flycatcher とは羽虫を捕食する鳥の意で、ヒタキを指します。Narcissusは、ナルシストの語源ともなったギリシャ神話の美少年ナルキッソスのことです。水に映った自分の姿に恋して溺死したナルキッソスがスイセンに姿を変えたとされるため、narcissusはスイセンの総称でもあります。スイセンというと白くて中央部が黄色いものを思い浮かべる方が多いと思いますが、ラッパズイセンなどの園芸種には全体が黄色いものもあります。「スイセン色のヒタキ」という名前をいただいたキビタキですが、5月の新緑の森で、美しい羽と美声を誇っている姿は、「ナルシストのヒタキ」の方がしっくりくるような気もしてしまいます。

キビタキ
キビタキ
観察ポイント:全域
観察ポイント:全域
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言語社会研究科修士1年 中野晶子  
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